「孫の詩集」

           (平成二十一年五月五日 開設)

私には六人の孫がいます。それぞれ個性のある存在です。
その中の一人が 「詩」 に拘っています。私からみれば、
単なる雑文にしか見えませんでしたが本人は本気でした。
今度詩集を出版する予定です。その一部を紹介致します。
ご一読のうえ、左記へご感想を頂ければ幸いです。
★「孫のブログ」

 世界

馴れ合いのような小さな世界が 今日もあちこちに散らばっている 上から見下ろせば 誰が誰かもわからない程に 世界はきっと 想像もつかない程広く ただ いくら世界は広くとも 目に見えるものは限られて いくら世界は広くとも 夜には誰もがカーテンを閉める 私は今 どこの世界にいるのだろう 一人ぼっちは寂しいものだと 見渡す限りの世界は言う 例えば 過ちを許すために 例えば 愛を貫くために 例えば私は 一人で生きる事を 選べるだろうか 人は一人でも生きてゆけると 口にした人を 私は知らない ただ 人は誰もが一人だと 唄う歌を知っている

 宙を舞う

宙を舞う 腹が鳴る 爪を噛む 目をつむる 歩み寄る ニュートラル まゆがしら 話し声 夢うつつ 扇風機 紙袋 レントゲン 笑い声 山手線 コアジサイ 犬のフン エイトフォー 携帯電話 君焦がれ 風に揺れ 痒み止め とめどなく さりげなく たえまなく あてどなく やりばなく なんとなく 宙を舞う 鼻が出る 君思う

 きょり

僕は 生き急ぐようにして 言葉を探し始める 君は 少し気だるそうに すべてが嘘だと塞ぎ込む ついさっきまで 君と電話で話をしていたのに 僕の心はもう 君以外のものへの意識で みるみる 遠ざかっていく そこに蠢く欲望があり 宇宙には静寂があり 遅刻に理由がある ただ 何かが足りない きっと僕らは そんな風に 僕らの距離は そんな風にして量られているのだろう 黄昏 少年達がまたねと家路に着く そして僕はもう一度 君の事を考える

 眠りに着く前に

眠りに着く前に 考えておくべき事 残しておくべき言葉が 僕の心には溢れていて いっこうに眠れそうもない 風化した思い出に 美化と言う違和感を 僕は君の心に確かめている やらなければならない事とは何か 或いは 行動原理とは 僕は何を感じ 何に動かされ 何を思うべきなのか やらなければならない事など そもそも やらなくてもいい事で そこに理由があるにしろ 所詮 やらなければならないとしか 僕は納得ができないだろう せめて やらなければならない何かを やりたい事に置き換えて もうしばらく 僕はここに 腰を置いてみる それが やらなければならない 何か なのだから

 いのり

僕は今 どこの誰かも知らない相手に メールを送っている どこの誰かも知らない事を 深く考えたりはしない そんな事は もはや どうでもいい事のような 気さえしている 日々は確実に 僕の感覚を麻痺させてゆく 生きる事そのものに 大層な意味などなく 暮らす事にだけ 大きな意味が見出せる なぜ僕は 眠らなければならないのか 本当は 眠る事に 理由など存在しないと言う事を 取り留めもなく 思い浮かべてみる 僕に待ち受けるあすは 秩序と言う幻 そうして 僕は 眠りに着く 「『詩集』〜と書いてみた 説得力がないので カギカッコをつけてみた〜」より引用   依摩    ご来訪ありがとうございました。