作戦要務令

第三部


第2篇 補給及び給養

第1章 兵器の補給

第1節 弾薬の補給
  1. 第133
    弾薬の補給の適否は直接戦勝に重大なる関係を有するものとす。而も、之が補給は追送に依らざるべからず。故に、高級指揮官は作戦の推移、戦闘の性質等を考慮し、周到にして、且つ機宜に適する処置を講じ、最も効果ある補給を実施すること緊要なり
  2. 第134
    師団長は輜重隊をして弾薬交付所を開設し、各部隊に弾薬を交付せしむるを通常とす
    師団長は弾薬交付所の開設に方り使用すべき所要の弾薬は積載輜重兵中(小)隊数を以って示すを通常とし、爾後要すれば更に弾種、数量等の細部に関し之を示すものとす
    輜重兵連隊長は戦闘間別命なきときは、開設に方り命ぜられたる弾薬を弾薬交付所に在らしむる如く補充を継続するを通常とす
    弾薬交付に方り兵器勤務隊は所要に応じ交付業務を援助するものとす
  3. 第135
    弾薬交付所は、展開の状態、地形、特に道路の景況等を考慮し、1若しくは数箇所に開設す。此の際、歩兵弾薬の為、第一線歩兵連隊に対し1箇を設くるを得ば有利なり
    弾薬交付所と交付を受くる部隊との距離は、道路の景況、弾薬班及び段列の輸送力、輸送量等を考慮し、歩兵の為には勉めて前方に位置し、爾後戦線の推移に応じ逐次移動するものとす
  4. 第136
    高級指揮官は戦闘に方り使用し得べき弾薬の概数を示したる場合に於いても、要すれば戦況の推移に応じ、各部隊に補給すべき弾種、数量等を示し、以って其の使用を現況に適合せしむるを要す
  5. 第137
    各級指揮官は必要以上の弾薬を補充するは厳に之を戒むるを要す。又、命令以外の弾薬を集積するを得ず
  6. 第138
    歩兵連隊弾薬班の弾薬は弾薬交付所に、歩兵大隊弾薬班及び歩兵連隊砲弾薬小隊の弾薬は通常歩兵連隊弾薬班、状況に依り弾薬交付所に到り補給を受くるものとす
    野戦砲兵大隊段列の弾薬は通常連隊段列、状況に依り弾薬交付所に到り補給を受くるものとす
    野戦砲兵連隊段列にして自動車編制にあらざるものの弾薬は、弾薬交付所に到り補給を受くるものとす
    師団の編制内に在る自動車編制の連隊段列(連隊を為さざるものに在りては其の段列等)は弾薬交付所、積換所、若しくは兵站に、師団に配属せられたる部隊の自動車編制の段列等は直接兵站に到り補給を受くるを通常とす。但し、小なる部隊に対しては所属部隊長適宜之を処置するものとす
    状況に依り、前諸項に依ることなく輜重隊直接第一線又は砲兵中隊等に補給することあり。追撃の場合等に於いて特に然り
  7. 第139
    弾薬の補給機関を有せざる部隊は、最寄歩兵部隊或は輜重隊より補給を受くるものとす。此の際、弾薬の請求を受けたる部隊は為し得る限り之に応ずるを要す
  8. 第140
    戦闘後、適時に輜重隊より補給を受くる能わざるとき、ならびに輜重隊の有せざる弾薬の補給を受けんとするときは、速やかに高級指揮官に報告するものとす
  9. 第141
    弾薬は素箱に納めたる侭補給するを通常とし、之を受領したる部隊は所要に応じ適宜弾薬車又は弾薬箱に収容す
    弾薬の補給に方りては、勉めて同一口のものを同一部隊に交付するものとす
    弾薬の補給に任ずる部隊は其の空車馬等を利用し、打殻薬莢等の後送に勉む
  10. 第142
    弾薬の補給に方り其の数量を示すには、小銃、機関銃弾等は箱数を、其の他の弾薬は弾数を用うるを通常とするも、輜重隊等に在りては其の積載中(小)隊数を以ってすることあり