作戦要務令

第四部


大河の渡河

第1章 渡河一般の要領

要則
  1. 第2
    大河の障碍を利用し直接河岸に設備しある敵陣地を攻撃するに方りては、企図を秘匿し周到なる準備を整え、敵の意表に出づること特に緊要なり。而して、一度渡河を開始せば之が変更困難なるを以って、縦い困難なる状況に遭遇するも断乎攻撃を遂行せざるべからず
    敵、河上艦艇を有するときは適時之を撲滅するに勉むるを要す。然れども、企図を過早に暴露するが如きことなきを要す
  2. 第3
    渡河に方りては、縦い当初企図を秘匿し得たる場合に於いても途中より強行せざるべからざるを通常とす。故に、綿密に河岸の地形を研究し、有効に敵岸を火制し得るが如き地点に渡河点を選定すると共に、予め火力準備を十分ならしむるの着意必要なり
  3. 第4
    高級指揮官は大河の為第一線部隊の孤立に陥るを防ぎ、且つ、迅速なる戦果の拡張に遺憾なからしむる如く、必要なる事項に就き、渡河準備の当初より計画し、特に工兵の兵力、渡河材料等に十分なる余裕あらしめ、且つ之が使用に適切ならしむるを要す
  4. 第5
    各級指揮官は、沿岸に存在する水流、湿地等、各種の地障を適時克服せんが為、予め必要なる処置を講じ違算なからしむること緊要なり。前岸のものに於いて特に然り