作戦要務令

第四部


瓦斯用法

第1章 諸隊の運用及び協同
  1. 第22
    師団長は瓦斯使用に方り通常左の事項中必要の件を命令するものとす
    • 瓦斯使用の目的
    • 瓦斯使用の時機及び地域
    • 瓦斯使用に関する部署
    • 瓦斯の種類、数量、及び使用手段
    • 瓦斯を使用する部隊と一般部隊との協同
    • 気象に関する事項(瓦斯に関する気象観測、気象判断の資料収集、通信連絡、気象報等)
    • 補給
    • 企図の秘匿
    • 気象の変化に対応する処置等
    師団長は瓦斯使用に方り、為し得る限り速やかに自己の企図を明示し、関係部隊をして予め所要の準備を整えしむるの着意緊要なり。又、縦い予期する効果を収め得ざる場合に於いても戦闘に支障を生ぜしめざる如く、予め考慮し置くを要す
  2. 第23
    歩兵は自ら毒煙筒を放(発)射して其の戦闘を有利ならしむ
    毒煙筒を使用するに方りては、友軍の戦闘を妨げざるに注意すると共に、所要に応じ関係部隊、特に砲兵と予め協定を行うを要す
    騎兵、工兵等の毒煙筒の使用に関しては前諸項に準ず
  3. 第24
    瓦斯放射に方り、指揮官は通常左の事項中必要の件を命令するものとす
    • 放射の目的
    • 放射正面、又は制圧目標及び其の重点
    • 放射に関する部署
    • 放射位置
    • 放射準備完了の時機
    • 放射開始及び終了の時期
    • 使用資材の種類、数量、及び補充
    • 関係部隊との協同
    • 企図の秘匿
    • 気象の変化に対応する処置等
    瓦斯発射に関しては前項に準ず
  4. 第25
    毒煙筒の放射に方りては適宜之を集団配置し、其の筒数は所望の敵正面に於いて所要の濃度を得しむる如くし、其の時間は成るべく10分以上とするを可とす。長時間使用する場合に於いては適宜断続して実施す
  5. 第26
    迫撃隊は主として一時瓦斯弾射撃に依り敵を圧倒震駭し、主として第一線歩兵の決戦に協同す。迫撃隊の1地域に対する一時瓦斯弾射撃は、通常2分以内に終了するものとす
    迫撃隊は状況に依り持久瓦斯弾射撃に依り、敵陣地の要部、若しくは重要なる目標を制圧することあり
    師団長は配属せられたる迫撃隊を、之が使用の目的、兵力の大小、地形等に応じ、迫撃隊長をして統一指揮せしめ、或は必要なる方面の第一線部隊に配属するものとす。状況に依り、一時其の射撃に関し師団砲兵指揮官をして区処せしむることあり
  6. 第27
    迫撃隊を使用する指揮官は、瓦斯弾射撃の為、通常左の事項中必要の件を命令するものとす
    • 射撃の目的
    • 射撃目標(地域)
    • 射撃準備完了の時機
    • 射撃開始、要すれば完了の時機
    • 陣地の概要、要すれば進入地域及び時機
    • 弾薬の種類、概数、及び補充
    • 歩兵、戦車、砲兵等との協同
    • 企図の秘匿
    • 陣地変換等
    射撃準備に方りては砲兵の測地結果を利用するの着意を必要とす
  7. 第28
    砲兵は所要に応じ持久瓦斯弾、時として一時瓦斯弾を使用し、軽妙なる運用に依り其の威力を発揮するものとす
    状況に依り、瓦斯弾を適宜普通弾若しくは発煙弾と混用し、又は交互に使用することあり
    師団長は砲兵の瓦斯弾の携行及び補給に関し、適時必要の指示を与うるものとす
  8. 第29
    砲兵の瓦斯弾射撃に方り奇襲的効果を収めんが為には、其の目標に対して直接試射することは勉めて避くべしと雖も、特に之を必要とする場合に於いては普通弾を使用するものとす。此の際、爆煙の景況等に依り目標附近の気流の現況を判断するに勉むるを要す
    一時瓦斯弾の射撃に在りては、1地域に対し2、3分以内に之を終了すること緊要なり
  9. 第30
    瓦斯隊は主として撒毒、要すれば放射を実施し、第一線部隊の戦闘に協同するものとす
    瓦斯隊中、機械化せる部隊は要すれば敵弾下に於いても迅速に作業を強行し得るも、企図を秘匿し難く、且つ地形の制限を受くることあるを以って、撒毒の地域及び時期の選定を適切ならしむること必要なり。又、駄馬編成の部隊は作業迅速ならず。又、好機に投ずる作業の実施困難なるも、地形の制限を受くること少なく、且つ夜間隠密作業を行うに適するものとす
    師団長、配属せられたる瓦斯隊を直轄使用すべきや、或は第一線歩兵に配属すべきやは状況に依る
  10. 第31
    瓦斯隊を使用する指揮官は、撒毒の為、通常左の事項中必要の件を命令するものとす
    • 撒毒の目的
    • 撒毒地域又は方面
    • 撒毒開始の時機
    • 使用瓦斯の種類、数量、及び補充
    • 他部隊との協同
    • 作業の掩護及び援助
    • 作業終了後の行動等
    状況に依り、単に協同すべき部隊を示し適宜行動せしむることあり
    放射を行わしむる場合に於いては前諸項に準ず
  11. 第32
    飛行機は所要に応じ瓦斯弾投下又は瓦斯雨下に依り、若しくは此等を爆弾と併用して地上作戦に協力するものとす
    飛行機の瓦斯使用の目標、時機、及び方法は、主として戦術上の要求及び瓦斯効果発揚の難易を考慮して之を定む
    飛行部隊瓦斯を使用して地上部隊の戦闘に直接協同する場合に於いては、当該正面の師団長は機を失せず飛行部隊の指揮官と連絡し、通常左の事項に関し協定するものとす
    • 瓦斯使用の目的
    • 瓦斯使用の目標又は地域
    • 瓦斯使用の時機、方法及び規模
    • 瓦斯の種類等
  12. 第33
    瓦斯を使用せる場合に於いては、第一線部隊は瓦斯効果の完全ならんことを待つことなく、機を失せず其の効果を利用し、断乎として所定の企図を遂行せざるべからず