大空の名優達

JU87氏がBBS-Qにおいて発表したものの転載です


                            PART1

「大空の名優達」・・・いい言葉ですね(自画自賛ダケド)
このシリーズは、フライアブルな日本機に関する話題を中心に紹介します。

となると舞台はアメリカですねぇ。
ここは我ら航空機フアンにとっては、とっても憧れの地でなんですよ。
なんたって公私立、陸海軍、いろんなジャンルの航空機博物館が沢山有ります。
その数は500はくだらない といわれています。
大戦機のコレクションで有名なのは、なんたってスミソニアン航空宇宙博物館でしょう。
特に歴史的に価値のある航空機の保存に力をいれ、質量共に世界屈指の規模を
誇る 最も充実したコレクションではないでしょうか?
但し 今回のシリーズのメインとなるフライアブル機は有りません。
というか貴重な財産なので可能であっても、飛行はさせないそうですが・・・



米国カリフォルニア州にあるプレーンズ・オブ・フェイムとは、第一次世界大戦から
ベトナム戦争前後のジェット・ファイターまで、あらゆるウォーバード約140機を保有する
私設航空博物館です。
なんといっても ここの特色は、対象を軍用機に限定している事と、その機体を
できる限り 「飛行可能な状態で維持していく」 という精神です。

所有する140機中 第二次大戦米国機を中心に、約30機が飛行可能な状態です。
その中に、今回の主役がいます。
オリジナルの「栄」エンジンを搭載した、唯一無二の零戦52型61ー120号機がそれです。
オリジナルの機体と発動機をもっている、純粋の零戦といえるでしょう。

ここの博物館の目玉商品に、テーマを決めて行われる「エアショー」があります。
機種別の重点的なデモフライトや、模擬空中戦など多彩な内容で楽しめるそうです。
もうひとつは大戦機の体験飛行です。予約をすれば誰でも乗せてもらえる!
で その料金がまた安い!ト思うケド・・・
$375で ムスタング、ウォーホーク、サンダーボルト、コルセア、ドーントレスの後部座席
$525で B-25Jミチェル ただし五名まで同乗可

それにしてもアメリカ! ちょっと遠いかなぁ・・・

3


米国にある コンフェデレート・エア・フォース (通称南部空軍)とは、1957年にP-51Dを5人で
協同購入したことから、スタートした私設航空博物館です。
ここでは軍用機を単に集めるだけでは無く、なるべく飛行可能な状態で残す
という方針を明確にもっています。
ともすれば飛行可能な状態を保ちながらも、「これほど貴重な機体を危険にさらす
つもりは無い」と、飛行させない方針で管理する方法と比べ対象的ですね。

飛行可能の零戦2機のうちの、片方の21型はここが所有しています。
機体はオリジナルですが、残念ながらエンジンンがオリジナルの栄21型(940馬力)ではなく、
F4Fと同じプラット&ホイットニー R1830 ツインワスプ(1130馬力)を装備しています。
しかしながら近年の財政悪化から、この零戦を売却する計画もあるそうですが
詳細は不明です。

1970年の「トラ・トラ・トラ」に登場した 零戦、九九艦爆、九七艦攻各モドキは、ここで
製作されたのをご存知でしょうか?
引込脚のT-6テキサン練習機が零戦に、固定脚のBT-13バリアント練習機が九九艦爆に、
九七艦攻はT-6とBT-13を組み合わせ改造したそうで、現在でも所有されてます。

また戦後機になりますが、P-82Bツインムスタングという珍品もあります。唯一飛行可能
な機体だったのですが、事故により不可能になりました。機体はなんとか修復
できたのですが、左右逆回転する独特のプロペラが、入手不可能とのことでした。

しかし 誰か お金沢山もっている人!零戦買ってもらえないかなぁ・・・


4

ニュージーランドにあるアルパイン・ファイターコレクションとは、第二次大戦の連合軍戦闘機
を主体に展示された古典機博物館で、20機近い展示機のほとんどが飛行可能の状態を維持
されています。

カーチスP-40キティーホーク、ボートFU-1コルセア、ノースアメリカンP-51Dムスタング、
グラマンTBMアベンジャー、スーパーマリン・スピットファイアーMk14&Mk16、ヤコブレフ・Yak3M等の
展示がありますが、中でも特筆すべきが「隼」1型ではないしょうか。

この機体は、昭和20年9月にラバウルのジャングルでニュージーランド軍に発見された
「陸軍飛行第11戦隊」所属の隼で、二枚プロペラの1型でした。
これを1994年に同社が入手し、復元が開始され完成したものです。

その復元方針が感激モノ!
できるだけ(ネジの1本足りとも)オリジナルの状態を生かし、復元再生を目指す。
当然エンジンは「ハー25」です。これをオーバーホールした努力と技術はすばらしいデス。
かって三菱重工が、カロリン諸島のヤップ島から持ち帰り、52型甲を復元したのですが
製造会社が手がけながら、残念ながらエンジンは眠ったままでしたから・・・

95年に完成した機体の再現度は高く、異国の地で完全な「隼」はよみがえった。
おそらく飛行可能な状態だと思われますが(未確認)、安全の為にそれには至って
おらず、滑走路を走る?姿が紹介されていました。

うーん ニュージーランドか! ここもヤッパ遠いっすね。


5

零戦の製作メーカーといえば、ご存知 日本の三菱と中島なんですが、カナダにある
ブレインド社は同国民間航空局に正式認可された、現役のA6M2の製造メーカーなのです。
(零戦の残骸を集めて復元した話は、内外に沢山ありますが・・・)
つまり すべての部品をまったく新しく作って、零戦を製作してしまう訳です。

この零戦という機体は、同程度のそれと比較して 実にパーツが多いそうです。
技術的に見ると「何でわざわざこんな面倒な事を」と思うほど手のこんだ構造
らしく、これは工数の低減を犠牲にしても軽くつくる事を優先した 堀越氏の
設計哲学に基ずいている。という事です。
つまり 量産性を犠牲にして得た高性能機といえるでしょう。
結果的には一万機以上もつくられた、日本の最量産機になりましたが。

気になるエンジンは当然ながら「栄」ではなく、比較的サイズの似かよったアメリカ製
プラット&ホイットニー R-1830(1200馬力)です。

そもそも この新造機の需要は、どんなものでしょうか?
北米及びイギリスには、「WAR BIRD」と呼ばれるWW2を中心にした軍用機の愛好家が
大勢いて、これらの飛行機の立派なマーケットが存在しています。
当然 多くの軍用機を生産し、しかも戦勝国であるアメリカ機は多数残っているが、
反面 敗戦国の日本やドイツのは貴重で、特に零戦はその価値が高いようです。

それにしても 人件費、材料費も大変そうですが、エンジニアリングや作業の難易度を
考えると、まったく敬服の至りです。
本家 日本をもして考えもつかないNEW零戦!その雄姿はいかに・・・



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