機種統合の可能性

 軍種を越えた「機種」の統合の話題が盛んですね。
 そこで、色々と調べてみると、実際色々と難しい問題が出てきました。

1.技術的な限界
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  戦闘機を航空機と見るか兵器と見るかで、捉え方に差が出ます。
  兵器ならば、まず作戦運用想定があって、その要求から仕様が決まっていきます。

  今では大出力エンジン、高性能電子機器、高度教育システムなどが実現され、
  余裕のある速度、推力、搭載力、処理能力を持たせられるので、「万能機」も
  不可能ではないのですが、少なくともF−15C/D以前までは、「特化された機」
  しか生産できなかったようです。

  例えば、「迎撃機」は、敵爆撃機の発見から到達までの「時間」内で、迎撃する
  必要に迫られるわけです。
  従って、機動性、航続距離などは犠牲にしてでも、その速度を実現しなければな
  りません。
  今はレーダーシステム等が組み込まれ、「迎撃単能機」は不要となっていますが、
  これが実現できたのは、70年台後半になってです。


2.統合機種の成功例

  米国に絞って挙げると、F−ファントムIIがあります。
  これは、元々、空軍のセンチュリー計画機F−110の事で、名称改変によって
  F−4となったものです。

  F−4のコンセプトは「ミサイル・プラットフォーム」というものです。
  ですから、最初は「機関砲」は搭載せず、大出力により、搭載量を増やし、各種
  ミサイル8発と大型レーダーを積むというもので、機動性などは捨ています。

  当時の海軍の主力艦上戦闘機は、F-8クールセイダーであり、対抗機種のMIG-23
  に対して、能力の不足が生じ、本格ミサイル搭載機が必要となりました。
  この後継機はF−111に決まっていたものの、開発が旨く行かず、かと言って
  他の機種が無いため、つなぎとして採用されています。


3.統合機種の失敗例

  F−111は、初の可変後退翼を採用し、「空海軍統合戦闘機」として開発が始
  まったものです。
  これは、マクナマラ国防長官が自動車屋出身で、その量産ノウハウを持ち込み、
  「コスト/フォーマンス」という単語も作って話題になりました。

  しかし、現実は「両者の要求」を満たすため次第に巨大化してしまいます。

  結局「無駄の無い2機種」と「量産効果の1機種」とどちらが「安い」かの選択
  を求められすが、「官僚主義のため1機種にこだわる」こととなり、貴重な時間
  を失ってしまいます。
  失敗を認め、新たな計画に入ったのは、15年を経た後になります。


4.第二次大戦機について

  零戦と隼においても、零戦は長距離侵攻、隼は反復攻撃性能と、目的が異なり、
  使用された場面も、大陸と海洋との差があります。

  たまたま、太平洋戦争が海洋中心に生起したため、零戦の活躍が目立ちますが、
  これは「陸の要求を切り捨てた結果」、海洋での戦いで有利になったと思います。

  また、後年、2000馬力世代は、陸の疾風が活躍しますが、海の2000馬力
  烈風は登場さえしていません。(迎撃機は侵攻・制空に使えない)
  疾風の成功は、「海の要求を切り捨てた結果」だと考えます。


5.総論

  機種統合は、簡単じゃなさそう・・・・ (笑)


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