魚雷は大人になってから・後篇



第21.5章『時のながれが止まって』


S:さて後編だ
★:今回は早いですね
☆:前回は一ヶ月空きましたーっ
S:うう・・・
  後編が肥大化したんで、分けたの
  だから、そのままの流れで一気に行く事にしました
★:まあ、間があくと気が抜けますからね
S:そゆことだ
  てなわけで、一気にいこう

☆:まずはおさらいですね
S:第一次大戦後からの巡洋艦の発達と変換
  それに魚雷の性能向上が頭打ちになった事は述べたね
  今度は、同じ時代の駆逐艦の話と魚雷戦術、構想について見ていこう
★:やっと、魚雷の話になります
S:魚雷にのめりこんでいった、とある海軍の妄想と暴走が生み出した物
  大艦巨砲主義の終焉、それを眺めてみよう

★:各方面から判りにくい、長いと文句が来ていますが?
S:うん、そのとおりだと思う(ぉぃ
  イイワケするなら、全ての章はパズルのピースでしかないんだ
☆:全体が揃わないと意味が無いんですねっ
S:ある程度揃えば、おぼろげに見えてくるかもしれない
  ただ、自分でも、まだ見えていない所は沢山ある、それも事実だね
★:このままだと、とんでもなく大風呂敷になりますよ
S:数値と、戦艦をなるべく、可能な限り避けた理由はそこだったんだが
  まあ、各方面から要望があったから、仕方が無いわな(ぉぃ
☆:責任転嫁ですーっ
S:数字を出すことで、書くのは楽になったよ、物凄くね
  書くことが増えたのも事実なんだが

★:これらがピースなんだとするなら
  次は何を繋ぐのですか?
S:基本に立ち返ってもらう、艦隊の基本にね
  そして、その中での魚雷戦という手段、それを見てもらう


S:進行は
☆:素敵に無敵、華麗に暢気、チャームポイントは手首の傷痕
  突き抜けた狂気倉田佐祐理(18歳)と
★:座右の銘は温故知新
  だれも本当の私を知らないの、特技は『私に関らないで光線』
  オバサンじゃないもん天野美汐(夢見る15歳)がお送りします



第二十二章『光の粒』


S:魚雷の構造はわかったね
  次は、これをどうやって武器として使うのかを考えてみよう
☆:敵の方向に向けて発射するんですねーっ
S:そう、そのとおり、そして、そこが一番重要なんだ

S:砲撃と雷撃の最大の違いは、この攻撃時なんだ
  佐祐理さんが言ったように、魚雷は、敵の方向に向けて発射すればよい
  じゃあ、砲撃は?
☆:やっぱり、敵の方向に向けて発射しますーっ
S:ぶっぶー
☆:ふぇ〜?
S:敵の方向に向けて撃っただけでは当たらないよ
  砲弾は重力に従って落下するから、適当な仰角を与えて、上に向けないと
  目標に到達する前に海面に落下してしまう
  敵との距離に応じて、与えるべき仰角が変化するから、測距が重要になる
★:砲撃するには、目標の方位と距離が必要なのですね
S:そして、魚雷は、一定の、定められた深度で進むから
  距離によって何かが変ると言う事は無い
  針路上に目標が有りさえすれば、当たる
★:発射に必要なのは方位だけですね

S:この事は極めて重要だよ
  多少の測距誤差は許容できるけど、船舶程度のサイズを相手にした場合
  例えば10,000での許容誤差は100〜200mにしかならない
★:大体、距離に反比例するんですね
S:一般に方位の精度は距離の精度ほど悪化しないから
  魚雷は砲よりも命中率で勝ることが判ると思う

★:でも、実際にはそれほど当たってないようにも感じます
S:それは回避される可能性が有るからだよ
  もし、相手が回避運動をしなかったら、命中率はきわめて高くなる
☆:でも、そんなに当たるのですかーっ?
S:当たるよ
  勿論、正確な照準が必要なのは事実だけどね
  魚雷は砲弾に比べるとはるかに遅い、だから未来位置の予測が難しくなる
  相手の移動速度、移動方向をしっかりと把握しないと当たらないし
  もうひとつ、砲撃と違って、修正が出来ない
  砲撃は試射をして、思ったのとどれだけ違うのかを確認する機会が有るけど
  雷撃だと、これが出来ない
  よって、砲撃で初弾命中させるのに似た難しさがある
★:初弾夾叉なんて、砲撃ではまず無いです
S:だけど、そこで測距が要らないなら、条件は緩和する
  ただ、目標の観測を充分に行なわないと、移動ベクトルの確認が難しいのも事実だ
  そこで、観測しつつ、接近する
★:やはり接近ですか・・・
S:接近することは、照準の正確さを増大させて
  照準の許容誤差を増加させる、つまり当たる、そして回避時間が減る
☆:肉薄攻撃こそが正義であるとっ
  じゃあ、遠距離雷撃なんて意味が無いですねーっ
S:遠距離で攻撃する方法も色々考えられたよ
  ただ、航跡からどうしても回避されやすいし、照準も難しい
  やっぱり接近が望ましいね




第二十三章『Brand-New Heart』

S:ここで、しつこいけど、もう一度、近代海戦史を眺めて欲しい
  魚雷攻撃は接近しないと難しい
  速射砲と砲撃技術の向上は、軽艦艇が接近するのをどんどん困難にした
  これを念頭に置いてくれ

S:さて、肉薄するための手段を様々に考えてみよう
  最初に使ったのは、見つからないように、こっそりと接近するって奴だ
★:初期の水雷艇とかですね
S:潜水艦なんかは、水中からこっそりだね
  この手段の問題は、速度を出せない事だ
  高速を出すと、騒音や航跡が見つかり、気づかれる可能性がある
  目標がそれなりの速度で動いてる場合、接近は難しい
★:単純に考えても、目標と同等以上の速度がないと距離を詰めるのは困難です
  予め先回りしておくか、停泊中にしか使えないですね
S:応用としては、狭い水道なんかで島影に隠れて待機するってのがあるね
  ソロモン諸島やスリガオ海峡で米軍が多用した手段だ
  まあ、ある種の先回りだが
  夜間、地形を活用することで、会敵距離を大幅に短縮させることが出来る
  これなら接近しやすいし
  高速を出して強引に突っ込むことに切り替えても危険は少ない
☆:だけど、これは常に使える戦術ではないですねーっ
S:そうだね、沿岸防衛に徹するなら、使い方もあるけど、外洋では使えないね

★:となると機動力を生かしての高速接近ですね
S:そうだね、ある程度大きい船とか、日中だと、こっそりと接近するのは難しい
  この場合は、強引に突入するのが一般的だ
  場合によっては、敵の防御火器を制圧できる火力も欲しい
  変形といえるのは、第一次大戦時までの戦艦なんかだね
  高い防御力と火力で接近を可能とするわけだ
★:巡洋艦の場合は、この火力防御力を併用することで雷撃遷移を容易にするんですね
  でも、駆逐艦みたいに貧弱な火力ですと難しそうです
S:そうだね、だから日中の接近戦闘は困難だと思う
  第二次大戦のノルウェーで英戦艦ウォースパイトがドイツ駆逐艦を蹴散らしたでしょ
  マトモにやったら、ああなる
★:日中の雷撃が成功した例ってあるんですか?
S:そりゃ有るよ
  第二次大戦だと、サマール沖海戦が有名だね
  米軍の駆逐艦は全滅と引き換えに雷撃を成功させた、当たったのは一本だけど
  この時活用したのが味方の航空機と、煙幕とスコールだ
  つまり、マトモに「見える」「撃てる」状態では接近は困難だ
☆:じゃあ、煙幕を張って、それで、駆逐艦を沢山突っ込ませればーっ
S:注意して欲しいのは、煙幕は基本的には動かない
★:煙幕から敵が距離をおくように行動したら、その裏に隠れても意味は無いですね
S:陸戦で言う、地形障害の裏で待ち構えていたのと同じ事
  一種の防御戦闘だから出来た技だよ
  スコールや友軍航空機はともかく、煙幕は戦況次第では役に立たない
☆:煙幕は突撃に対抗する防御的手段として作用するんですねっ
  あははーっ、じゃあ昼間の水雷戦なんて、攻撃としては使えませんーっ(;_;)

★:やはり数量ですね
S:数隻が刈り取られる間に誰かが突っ込むという奴だね
  一種の飽和攻撃だ
  目標の防御放火を飽和できるだけの数量を確保出来るかがポイントになる
  勿論、長時間は持たないから、なるべく高速で突っ込むのが望ましい
★:船首方向から突っ込めば、防御火力も弱いですし、接近速度も最大になります
S:反航だね
  重要だったのは、この経路の選択だった
  一分一秒でも一瞬でも縮める事が、時間が安全と攻撃成功率に直結するんだ
  入念に検討され、散々熟慮した上で下される決断が突撃なんだ
  水雷突撃とは騎兵突撃と同じだ、間違ったタイミングで下したら自滅するだけ




第二十四章『陽の当たる場所』

S:防衛する側からも考えてみよう
  戦艦の防衛火力は大きい物があるけど
  その主砲を突っ込んでくる奴に使うのは勿体無いよね
★:もし敵戦艦が近くに居たら、そっちを撃ちたいです
S:となると副砲以下の火力で応戦するしかない
  勿論、これもかなり強力だけど、限度って物がある
  副砲に重量やスペースを使うなら、本音では主砲に使いたい
★:それでも大抵の戦艦の副砲火力はかなり強力です
  駆逐艦ぐらいならかなり撃退できると思います
S:敵の襲撃艦艇の数が多いとどうかな?
  副砲の射程はあまり長くないから、もう一息で雷撃されるかもしれない
☆:そんな遠距離では当たらないですーっ
S:避けなかったら当たる
  そして避けると言う事は?
★:望まない戦術運動を強いられると言う事です
S:つまり、接近される前に叩かないと駄目だ
  副砲は最後の武器、その前に機動副砲たる随伴艦艇を使う
  可能なら、接近経路を塞ぐように機動することで、雷撃を困難にさせる
★:戦艦を中心にして、巡洋艦や駆逐艦で周囲を囲むやり方ですね
S:応用としては、艦隊の前方に警戒部隊を配置して
  これで敵戦力の吸引や早期警戒、更には遊撃兵力としても使う考えがある
  主力同士の砲戦になると輪形陣は運動性が悪いので、一般には単縦陣とかに変更する
  場合によっては、この陣形変更を隙を突かれる事も考えられるね
☆:困りますねーっ
★:かといって陣形変更をしないと主力戦の時に困ります
S:一番良いのは前衛や警戒部隊を呼び出して、追い払う事だね
☆:主力戦の前にそういった前哨戦があるんですねーっ
S:こういった陣形変更や艦隊運動で発生する隙間を埋めるのも前衛の仕事だ
  言わば遊撃兵力だね
  戦場を縦横無尽に駆け巡り、要所に急行して、友軍の支援を行なう

S:さて、こうした防衛・護衛艦艇に必要なのはなんだろう?
☆:やっぱり火力ですーっ
★:接近経路を妨害するためには、機動力も欲しいですね
S:たぶん、正解なんだと思うんだが
  一番欲しいのは確実な行動能力だ
  海戦が始まったら、攻守両面で馬車馬のごとく使われるのがこの遊撃艦艇だ
  必要なら自分で雷撃もするし、水雷襲撃部隊を襲うこともする
  脱落した敵艦を始末するのも・・・そう、あらゆる事が要求される
★:軽巡洋艦ですね
S:そのとーり
  駆逐艦では、こうした何でも出来るだけの信頼性が当時は無かった

S:遊撃部隊としては、大規模な、準主力的な打撃能力まで期待した物から
  どちらかというとピケット的な用法を重視した物まで様々だ
★:日英独の巡洋戦艦は、強力な遊撃部隊という思想ですね
S:日本海海戦で成功したからね
  ただ、これは遊撃部隊にコストがかかる
  主力と機動力が違いすぎると、単に戦力を思い切り二分してしまうだけになる
☆:各個撃破される危険性が高まりますねーっ
S:日本軍の八八艦隊構想が戦艦も異常に高速だったのはこれが原因だ
  遊撃部隊が敵主力と遭遇したとき、スグにこちらの主力が来援できないと困る
★:遊撃部隊に多くを期待しない国家は
  その分を主力戦艦に回したと判断してよいのですね
S:こういった思想や運用方法の評価は難しい
  左をジャブだけにするのか、そちらにも打撃能力を期待するのか
  どちらのボクサーが強いのかな?
☆:左を製する者は世界を制すると言いますよーっ
S:日本海海戦はそうだったよね
  そして、第一次大戦と軍縮条約は、こういった運用を大きく制限することになった
  戦艦を中心とした打撃部隊、軽巡洋艦を中心とした軽快な遊撃部隊になっていく

S:さて、第一次大戦時に戻ろう
  遊撃部隊は巡洋戦艦に期待するとして
  あとは、細かい雑多な敵を始末したり、各種支援をしたり
  戦艦の随伴として、最後の砦として使える汎用軽艦艇が欲しいね、これが軽巡洋艦だ
  使えるなら駆逐艦も使うけど、出来れば軽巡洋艦が欲しいところだ
★:遊撃部隊も有力化すると、主力と同じように襲撃対象になりますね
S:それにも軽巡洋艦を随伴で使う
  主力部隊よりも駆け回る度合いがでかいから、やっぱり駆逐艦は邪魔だ

S:さて、こうやって、多段防御を行なえるようになると鉄壁だ
  マトモに襲撃したんでは、とても有効な雷撃地点まで接近できない
★:強固なシステムが構築されていますから
  まずはそれを崩さないと無理ですね
S:それには主力の殴り合いで勝利することでシステムを叩き潰すしかない
  水雷襲撃は艦隊決戦で勝ちが見えたときに、止めとして投入する物だったんだ
  その前段階である決戦での主力戦艦の殴り合いにはあまり役立たない
  敵への牽制とか脱落艦艇の襲撃とか使い道は沢山有るんだけどね
☆:日本海海戦ですねーっ
★:そして、勝ち始めたら、彼らも投入して止めに使うと・・・
☆:では負けそうな側は水雷部隊を有効活用できないのですか?
S:戦闘の趨勢を捻じ曲げる力は無かったと思うよ
  それは戦艦の力に頼るしかない、だけど補助には使えると思う
  それともう勝ったと思ってる奴らに教育してやる事は出来る
☆:そっか、護衛でもある随伴駆逐艦を投入タイミングを間違えると
S:そう、護衛が薄くなる可能性は有るよね
  だけど、それを恐れるあまり投入に慎重になると、勝機を逃すことになる
  戦艦という軸だけで考えればよかった決戦に
  新たに水雷襲撃という軸が加わったんだ
  これで決戦の成否は混沌としてくることになる
  日中の戦闘と水雷襲撃の関係は
  艦隊決戦の決定性を弱めたことだね
  戦艦に対する有形無形の妨害の可能性が
  戦艦の持つ攻撃力の発揮に影響を与えるようになったんだ

★:でも、まだ、勝ちを引っ張り込むだけのチカラは無かったんですね
S:うん、駆逐艦の行動能力の増大は、水雷部隊の戦力を大きく改善したけど
  これにはこちらの随伴駆逐艦で対応できる
  困るのは、随伴駆逐艦では対応できない奴の襲撃だ
☆:軽巡洋艦ですね
S:駆逐艦は、外洋の戦闘に常に介入できるとは限らない
  航続力と耐航性能の問題で、戦闘に参加できない奴が出てくる
  軽巡洋艦は、戦闘能力でも駆逐艦より上だ
★:じゃあ、外洋での決戦では駆逐艦はそれほど使えないと
S:自分たちの駆逐艦が使える状況なら敵の駆逐艦も使える
  ならば、敵に拮抗した戦力を用意すれば、とりあえず問題は無い
  物を言うのは、何時如何なる時でも戦力として計算できる巡洋艦だといえるね
  そして、巡洋艦が雷撃するには、数量の問題も有るので、結局、戦艦の支援が欲しい
  ビスマルクやシャルンホルストの撃沈は
  戦艦が叩いた後、巡洋艦が接近して雷撃して仕留めたよね
  あのカタチが普通だろう
☆:じゃあ、敵戦艦を叩きのめすことが出来るなら
  別に巡洋艦の雷撃能力はそれほど無くても良いですねーっ
S:そうだね、止めに使うならそれほどの能力は無くても良い

★:総合すると
  強力な戦艦部隊を中核にして、軽艦艇阻止と止めに向いた軽巡洋艦を随伴して
  ある程度の戦力の駆逐艦を配備した艦隊は、攻防両面で強力だと言う事ですね
☆:ただ、新たに水雷襲撃という可能性が生まれたことで
  艦隊決戦の構成要素が増加し、確実性が低下するようになったと・・・



第二十五章『Don't go so smoothly!』

S:日中の接近は、充分な防衛部隊が居ると困難だ
  それは何故だろう?
☆:雷撃には接近が必要だからですねーっ
★:発見距離が長く、防御側の対応時間が長くなるからですね
S:だから夜間戦闘をする
  発見距離が短いから対応時間が減少する
  そして弾着観測が難しくなるから射撃精度も下がる
  突っ込むのには夜間の方が向いている
☆:防衛側は展開範囲を広くして接近時間を長めにできませんか?
S:早期発見で対応するって奴だね
  それが囮だったらどうする?
  夜戦の怖いところは発見した物が何なのか、判らない事なんだ
  それに、展開範囲を広げると間隙が広がって、すり抜けられる危険性も増える
  予想襲撃方向にピケットを配置するぐらいがせいぜいだ
★:襲撃側としても、遭遇艦艇が主力なのか判断が難しいですね
S:そうだね、戦闘前、出来れば明るいうちにおおよその見当をつけておくのが大事だ
☆:下ごしらえですねーっ

S:日本海海戦のように、日中の艦隊戦で敵を散々にフクロに出来れば
  敵主力は、随伴艦艇とはぐれたり、損傷したりして防衛火力は弱くなる
  場合によっては火災なんか起こしてたりするから発見し易かったりする
☆:こうなると、襲撃の成功率は、襲撃側の戦力次第ですね
S:これだったら第一次大戦レベルの駆逐艦でも充分に可能だ
  どちらかというと、分散しちゃって逃走してる敵艦隊を発見するのが難しい
  日没前から触接して動向を充分に確認することが必要だ
  一種の追撃だから、襲撃部隊も行動能力が高い必要が有るね
★:日本海海戦で水雷艇が目標捕捉率が駆逐艦より大きく劣ったのは
  この行動能力の違いですね
S:となると、日中の戦闘で、敵の随伴護衛艦艇を叩いておくことが意味を持つ
  まずは護衛を明るいうちに減らしておいて、夜になって戦艦を襲撃するんだ
☆:なるほど、やっぱり下ごしらえが重要なんですね
S:ノホホンと突っ込むと危険だぞ
  夜間とは言え、戦艦の打撃力が無くなった訳ではない
★:砲撃では打ち合って負けますから
  雷撃したらさっさと逃走すべきですね

S:魚雷の性能向上、駆逐艦の発展と数量増大の結果もあって
  第一次大戦では夜戦も意外と多かった
  戦艦の射程距離増大の結果
  他の艦艇は夜間で無いと闘うことすら出来なくなったんだな
  そこで、色々と戦術が考案されたんだが
  重要なのは照明だった
★:探照灯、つまりサーチライトで照らすのが無難です
S:サーチライトを付けた奴は集中射撃の的になる傾向があったらしいね
☆:はぇ〜、第二次大戦の話じゃないんですか?
S:第一次大戦ってのは、後の戦争で出たような問題の多くが既に有ったんだよ
  このサーチライトもそうだ
  他には照明弾を撃つと言うのも有ったな
  一部の艦艇では照明弾専用に砲を載せるようなこともしている
☆:何らかのカタチで照らし出して、そこに向かって突撃ーっ
S:魚雷は回避される可能性が高い
  余程上手くいった奇襲でもない限り、敵に察知されていると判断すべきだから
  回避運動を封じるように、多方向から同時発射するのが望ましいとされた
  今までは、止めの武器か、相手の行動妨害だったのが
  もっと戦闘的な使い方になったんだ、そして求められたのが、発射数だ
☆:数が増えると命中率が増すんですね
S:そのため、魚雷発射管は単装から、急速に増えて
  第一次大戦末期には3連装とか4連装が一般的になってくる

★:結論としては、夜間では、防衛火力の減少が期待できる
  しかし、最終的には襲撃部隊も大きな戦力でもみ潰さないと安心できないと
☆:やっぱり数ですねーっ
S:軽巡洋艦は行動能力の面では合格だけど数を揃えるのは大変だ
  駆逐艦は数は賄えるけど常に使えるとは限らない
☆:やはり駆逐艦の行動能力増加が望まれますねーっ
S:だけど武装を強化すると行動能力は落ちるんだ
  迎撃火力として使えなくなったら困るしね・・・




第二十六章『風のノクターン』

S:さて、では水雷艇亡き後の駆逐艦の発展を眺めてみよう
  駆逐艦建造を途切れることなく、延々と続けていた英国の事例で見てみよう
  美汐ちゃん、20世紀初頭から、第一次大戦までの駆逐艦の火力を頼む
★:私の仕事なのですね・・・
  火力は一概には言えないのですが、取りあえずこんな感じでしょうか

英国駆逐艦火力の変遷

S:絶対値ではなくて、相対値を見てくれ
  英国の場合、初期の水雷艇駆逐艦から、このE級まで、基本的な火力は同じだ
  最初の26ノッター登場が1894年だから、約10年変化が無い
  当時の水雷艇を叩くなら、E級までの火力でも、実用上問題無かったんだ
★:この間の改正は、速度や行動能力の確保ですね
S:そして、各国が、水雷艦艇兵力の中心を駆逐艦に移行させることで
  駆逐艦は駆逐艦を撃破できる火力を求めるようになるんだ
★:日露戦争中の日本軍が同様に、既存駆逐艦の火力強化に走ってますね
S:つまり、机上でも、そして戦場でも、駆逐艦の火力要求が強まるんだ

☆:あれ?
  火力向上は1913年ぐらいで一度止まりますねーっ、これは・・・・?
S:翌年から第一次大戦が始まったでしょ
★:量産が優先されて、性能向上速度が鈍化したんですね

S:数量確保の見通しが立った英国軍は
  大戦中期以降は、性能強化した新型を送り出すんだけど
★:S級やV級といった、最新型ですね、雷撃力も強化されてます
S:砲撃、つまり、軽艦艇への火力投射だけでなく
  雷撃による大型艦艇への攻撃の要求も向上したんだな
  そして、注目して欲しいのは、魚雷の搭載数増加は、攻撃回数の増加でも有った
☆:同時発射でもみ潰すのではないのですか?
S:両舷に装備したり、応急的に小型旧式の魚雷発射管を増設したりしてるのもあるから
  必ずしも一撃全弾発射とはならない
  魚雷の性能向上、つまり熱走魚雷の長射程を行かせる方法論が確立してなかったんで
  外れたときのために、予備として装備した部分もあるんだ
★:前に述べた予備魚雷の装備ですか?

☆:こうして強力な艦艇になっていくのですねーっ
S:前に述べた巡洋艦を思い出してもらいたいんだが
  そこに在る事と、それなりに何でも出来ることが極めて重要だったよね
★:駆逐艦もそれが望まれるようになったのですか?
S:機関の性能、特に燃費の問題で、何処にでも居るってのが難しかったし
  小さな船体は、外洋での行動に不安を抱えていたけど
  それが出来ることが望まれたのも事実だよ
★:でも、それは果たせなかったのですね
S:例えば大西洋では、船団の大半は巡洋艦が護衛して、駆逐艦の支援は少なかった
  北海、地中海といった海域では活躍したんだけどね
  これは、近距離作戦では軽巡洋艦の代わりをすることが出来るって事で
  後に欧州各国の海軍が大型駆逐艦を軽巡代わりに使う遠因となった
★:だけど、大西洋や太平洋に面した海軍では、そうは行きませんね
S:それが、第一次大戦時に英国が50隻以上の軽巡洋艦を建造した理由だし
  第一次大戦後に日米が軽巡洋艦の大量建造に乗り出した理由だ
☆:駆逐艦は局地兵器でしかないと認識されていたんですねーっ
S:そう、まだ、ね
  英米はコレに対して、駆逐艦の行動能力増大で応えようとしていたけど
  未だに技術的課題は多く、超えることは敵わなかった
  何しろ敵の駆逐艦に殴り合いで負けちゃったら困るんだから
  敵と同等の行動力と敵に勝る火力が基本だったんだ

  局地兵器からの脱却が駆逐艦の性能上の目標であり
  効果的な雷撃戦術の確立が駆逐艦用法の目標になったんだ




第二十七章『Romantic』

S:さて、第一次大戦末期以降の、日本の八八艦隊に行こうか
☆:発達した技術を活用して、強力な駆逐艦建造に進むのですねーっ
S:日露戦争前後に急速に駆逐艦戦力を揃えた日本だったんだけど
  他の艦艇と同様にソレ以降の建造はあまり活発ではなかった
★:やはり予算ですか?
S:そうだね、それと、こうした新型駆逐艦とは、高度な先進技術のカタマリでもあった
  それを、ほいほい作れるほど、日本の総合力は無かったんだ
  日本は、英国が少しだけ提供してくれた新型タービンを参考に
  苦労しながら、新しいエンジン技術の開発から始めないといけなかった
★:そして、第一次大戦末期から戦後にかけて
  増大した国力も活用して、巨大プロジェクト八八艦隊計画を開始するのですね

S:日露戦争での経験もあって
  第一次大戦時までの日本は駆逐艦を二本立てで整備してきた
  一つは水雷夜襲に適した、小柄な駆逐艦
  そして、昼間戦闘に適した、火力と速力に優れる大型駆逐艦だ
  大型の方には、積極的に新技術を導入したプロトタイプという側面もある
  当然だけど、数量は大型の方が大分少ない
★:日露戦争以降から、八八艦隊計画の峯風以前の建造を見ると
  一等駆逐艦、つまり大型が四種、9隻
  二等駆逐艦、夜襲用小型も四種、22隻ですね
S:これを見ても判るように、駆逐艦を夜襲メインの兵器と見ていたんだ
  駆逐艦を突っ込んでくる敵駆逐艦の迎撃兵力としてではなく
  敵艦隊への突撃兵力として認識していたんだな
  どうせ太平洋を押し渡って来る駆逐艦なんて大して居ないわけだしね

☆:数量の割に級数が多いですねーっ
S:急速に発達する技術に対応するために、大型は実質的にプロトタイプだったんだ
  結局、その成果を小型に使いたくても、もたもたしてる内に旧式化しちゃってたんだ
★:一度に多数建造する予算が無かったのも致命的です
S:これらに対する反省が、時代を後追いするのでは無く
  時代を先取りした、先鋭艦艇で構成された八八艦隊計画の思想になったんだと思う

★:夜襲には小型の方が良いのですか?
S:被発見率が下がることを期待したんだね、でも、実際は違った
☆:はぇ〜小さい方が発見され易かったんですかーっ?
S:正確には、エンジンだ
  燃料代をケチって石炭も使っていたんだけど
  この煤煙には火の粉が含まれてる、夜間だと良く見えるんだな
  当時の日本駆逐艦は、高級プロトタイプの大型駆逐艦だけが重油専焼だったんだ
  夜戦演習をしたら、この大型の方が見つかりにくかったんだな
  結果、新造小型駆逐艦は、重油専燃のボイラーになったんだが
  これは取得・維持コストの増大に繋がる
  そして、多少の図体の違いは、被発見率に殆ど影響しないこともわかった
  じゃあ、小型駆逐艦の存在理由って?
☆:えっとーっ、んーっ・・・安い?
S:大きくした方が、高速で重武装だ
  コスト・パフォーマンスはあんまし変らないかもしれないよ
☆:でも、数量はそろいますーっ
★:数量は戦力として重要です
S:そうだね
  じゃあ、数量はなんで必要なんだ?
★:多数を投入すれば、戦力で勝ります
S:強い奴少数でも同じだろ?
  いいかい、数が物を言うのは、使い勝手なんだ
  やばそうなところ、戦力の配備が必要そうなところに
  適当な数量を、手持ちが無くなるまで、いくらでも手配することが出来る
  最低限度に使える性能があれば、とにかく送り込むことが出来る
  これが数量のもつ最大の利点だ
  大戦争、長期戦になると、これは物凄く効いて来る
  だけど、日本が望んだのは短期決戦だ
  この場合、あちこちに戦力を分散して送り込むなんて事はあんまし考えなくて良い
  基本的に数はチカラだ、だけど、一つの戦場に投入できる数には限りがある
  分散しちゃったら、居なくてもあまり関係が無い
★:遊兵化すると?
S:まあ、そーゆーことだ
  だから、戦場を飽和できる程度の数量
  指揮官がコントロールできる範囲の数量を確保出来るなら
  性能を優先するべきなんだ
  あくまでも決戦を前提にした考えかただよ

S:さて、大きいことの意味は判ったね
  もうひとつの影響が第一次大戦の結果だ
  日本は南洋の各地を信託統治領として貰ったでしょ
  この結果
  作戦範囲や防衛計画が大きく変化したんだ
  日本近海から、南洋まで進出しての壮大な遠洋作戦も視野に入れることになった
★:大きい方が航続力とかで有利ですね
S:戦場に到達できないのでは数が有っても意味が無い
  結果として、以降の駆逐艦建造は、全て大型駆逐艦になっていく

S:さて、話しを戻そう
  この新型駆逐艦群は、当時の最新最強レベルの性能を備えた優秀艦だった
☆:出すタイミングが良かったって事ですねーっ
S:ただ、まだ、この性能では圧倒的ではない、並より良いって程度だな
★:取りあえず先端レベルには到達しました
  後は改良を継続して対応するのです
S:うむ。日本の駆逐艦の場合、優先されるべきは雷撃力だね
☆:はいっ、魚雷をもっと強力にしますーっ
★:でも、技術的には、あまり発展余地は無かった筈です
S:だから、大型化した
☆:61cm魚雷ですねっ
S:最新鋭戦艦の水中防御を力任せにぶち破る大型魚雷の登場で
  日本の水雷襲撃部隊の攻撃能力は飛躍的に高まったんだ

★:では、第一次大戦末期ぐらいの英米大型駆逐艦と
  日本の八八艦隊計画艦を比較してみます

  まずは、英国です
  改W級は50隻以上の量産を予定しましたが、大戦終結でこの数量に留まりました
  少数建造された大型は嚮導駆逐艦としての用法が主体で
  型は異なりますが、同様の物が数種類建造されています

V級 改W級 大型
就役 1917-1918 1919-1924 1917-1919
常備排水量 1,090t 1,140t 1,801t
全長 95.1m 95.1m 101.3m
全幅 9.0m 9.4m 9.7m
機関出力 27,000 30,000 40,000
最大速度 34.0kt 34.0kt 36.5kt
主砲 102mm*4 120mm*4 120mm*5
副武装 76mm*1 76mm*1 76mm*1
魚雷 53cm*4 or 6 53cm*6 53cm*6
建造数 28隻 16隻 8隻

  そして、米国の駆逐艦です
  通称平甲板型の大規模量産を行なってます
  3群のうち、数量の多い2群を出します

Wicks Clemson
就役 1918-1919 1919-1922
常備排水量 1,160t 1,190t
全長 95.8m 95.8m
全幅 9.4m 9.4m
機関出力 24,200 27,000
最大速度 35.0kt 35.0kt
主砲 102mm*4(3) 102mm*4(3)
副武装 76mm*1 76mm*1
魚雷 53cm*12(6) 53cm*12(6)
建造数 111隻 156隻

  ( )内は片舷指向数

  日本です、大型駆逐艦の峯風系列は数群存在しますが基本的に同じなので
  最初の峯風と、小型版の樅型、それと、峯風系列最終型の睦月型です

峯風 睦月
就役 1920 1919 1925
常備排水量 1,215t 770t 1,315t
全長 102.6m 85.3m 102.7m
全幅 8.9m 7.9m 9.2m
機関出力 38,500 21,500 38,500
最大速度 39.0kt 36.0kt 37.3kt
主砲 120mm*4 120mm*3 120mm*4
副武装
魚雷 53cm*6 53cm*4 61cm*6
建造数 24隻 29隻 12隻

  建造数には準同型艦も含みます
  先の性能比較を同様に行なうとこんな感じでしょうか

各国駆逐艦性能比較


S:八八艦隊計画では、この峯風・樅系列を100隻以上作るつもりだった
  他国の戦力中核と対等に戦える量産型と
  最強級の大型駆逐艦で構成された、強力な軽快部隊だ
  大型駆逐艦に対抗できる性能の艦艇は、米国はゼロ、英国でも15%
  日本軍の約半数が、この大型駆逐艦だから、戦場での質的優位は確実だ
★:ですが、この数量しか建造されませんでした
S:そう、建造計画は途中で修正された
★:量産性の良い小型系列を放棄して、大型系列への切り替えだけでは
  この数量削減は理解できません

S:色んな理由があったんだ
  そして、その結果、峯風ファミリーそのものが打ち切りになったんだよ
★:その理由を教えて欲しいのですが?
S:うん、大人への第一歩だ




第二十八章『見えない月』

☆:打ち切りの理由ですーっ
S:峯風系列は、独特のデザインで太平洋の荒波に耐える能力
  強力なエンジンで、相当な高速
  水準以上の雷撃力と砲撃力を備えた、優秀といってよい駆逐艦だ
★:特に、最終グループである睦月は絶大な雷撃力を持っています

S:先に作戦海域が遠洋にシフトしつつあることは述べたね?
★:被発見率が劣らず、戦闘力が優れ、航続力も良好な大型駆逐艦
  生産の主力になるのは理解できます
  あとは、これを元に改良を続けるのが常道です
S:ここで問題になるのはワシントン条約だ
☆:やっぱり条約ですか
S:戦艦削減の結果、駆逐艦の対戦艦戦力としての期待は増大した
  これには睦月という、大型魚雷装備の駆逐艦で対応できる
  だけど、問題は、その使い方である漸減作戦だった

☆:決戦に先立って襲撃して弱らせるんですよねーっ
S:今までの想定では
  昼間決戦で、味方の戦艦と一緒になって闘う
  夜間襲撃で、脱落艦艇を雷撃する
  つまり、日本海海戦と似たような使い方を想定していたんだ
★:味方戦艦の相対的劣勢を強力な駆逐艦で補う・・・では無理ですか?
S:睦月型駆逐艦はそのつもりだったんだね
  だけど、それで何とかできる程
  駆逐艦の戦力は大きくないし、また味方戦艦の戦力も大きくなかった
  もっと抜本的な対策が必要に思われた
  よって、決戦の前に敵を減らしておいて、それから・・・って考えたんだ
☆:予め減らしておくのが漸減作戦の基礎ですねーっ

S:じゃあ、それを考察してみよう
★:決戦に先立って襲撃する場合
  より遠くで敵艦隊に突っ込む必要がありますね
  夜間襲撃ですから、位置確認等で行動の無駄も増えます
  それに、夜間で制限が入るとはいえ、無傷の艦隊ですから防衛戦力も大きいです
S:美汐が言うとおりだ、これらは大変な問題だね
  既存の駆逐艦程度の戦闘能力では、足りないと予想される
  さらに、南洋をベースにした迎撃出動なんかも想定されるから
☆:航続力の延伸も要求されますーっ
S:さらに長期作戦行動って言う事は
  悪天候でも港に帰れないことがあるわけだから、一層の凌波性も要求される
  今までは偵察巡洋艦が行動するような領域に戦闘部隊
  それも小柄な駆逐艦を投入することが着目点だ
★:峯風系列では全てに対応するのは困難です
S:抜本的な艦型の変更を行なった峯風系列は従来艦よりも優れた凌波性を持っていた
  所詮は、ちょっと性能の良い駆逐艦でしかない
  日本海軍が望む太平洋の行動力には、まだ不足だった
  連中は大嵐でも遠距離襲撃が可能な駆逐艦を要求していたんだな
★:嵐の中ですか?
☆:それは・・・それが出来たら軽巡洋艦ですーっ
S:従来の駆逐艦を数段上回る戦闘能力
  そして、駆逐艦の常識を超えた外洋行動能力
★:無茶ですね
S:そう、こんなことを駆逐艦に望むことは間違いかもしれない
  だけど、もし、それが達成されるなら?
  いや、それをしないと漸減作戦は成り立たない
☆:狂ってますーっ
S:今まで、延々と巡洋艦を述べたのは
  外洋で、いかなるときでも戦争できるのは巡洋艦だけだったからだ
  日本は、巡洋艦しか来ないような領域に駆逐艦を展開させようとした
  つまりは、駆逐艦の巡洋艦化を始めたんだ

★:従来でも、大型駆逐艦を軽巡洋艦と同様の
  つまり嚮導駆逐艦として運用するという方法が存在します
  あまり代わりが無いのでは?
S:嚮導駆逐艦の整備と大型駆逐艦の量産は違うんだよ
  何故なら、部隊の行動能力は、その構成の一番劣るものに合わせる
★:つまり、嚮導駆逐艦に率いられた小型駆逐艦部隊の行動能力は
  基本的に、小型駆逐艦のソレになると?
S:嚮導駆逐艦が大きいのは、指揮通信機能や戦闘支援能力を要求されたからだ
  結果的にそれは船体の大型化につながり
  当然、行動能力の増加にもなっているけど、それが目的だったわけではない
  巡洋艦とは、駆逐艦より強い軍艦では無い
  駆逐艦が行けないような外洋で行動できる艦艇を言う
  嚮導駆逐艦は強力な駆逐艦であって巡洋艦ではないんだ

S:そして、日本が造り出したのが特型駆逐艦だったんだ
  特型の特徴は、絶大な戦闘能力ではないんだ、すごく強いけど
  あの駆逐艦の本質は巡洋艦並の外洋行動能力だったんだ
☆:望む方も造る方も狂ってます
★:まさに、妄想と狂気
S:今までは、敵の駆逐艦との相対的な能力だけが重要なポイントだった
  駆逐艦は、敵の駆逐艦に殴り合って勝つことが出来れば、とりあえず合格だった
  駆逐艦は常に突っ込んでくるわけじゃない、それだけの確実性は駆逐艦には無い

  敵の駆逐艦が行動できるなら、こちらも行動できる
  こちらの駆逐艦が行動できないなら、敵のも行動できない

  だけど、駆逐艦が、巡洋艦並に動けたら?
  日本軍は、この駆逐艦を計算できる戦力として整備しようとしたんだ
  つまりは、既存の駆逐艦とは違う物になったんだ
  昼間攻撃機が全天候型になったぐらいの違いがある

S:以降の日本の主力駆逐艦が
  基本的に特型から変化が無かった事からも理解できるだろう
☆:ほぼ完成された姿だったんですね
S:技術的な問題点は幾つもあったよ
  だけど、日本軍が駆逐艦に望んだ機能や性能を全て備えていたのは事実だ
  ただ、航続力は、まだ足りないかった
★:14ノットで4,500〜5,000浬です
  これは峯風系列よりは向上してますが・・・
S:そうだね、思ったより伸びていない
  取りあえず、行動能力は確保した、どんな場所にも行ける
  次は、それを、もっと遠くへ

S:さて、漸減作戦にはこの水雷部隊の数量が必須だ
  だけど、ロンドン条約(1930)は駆逐艦の性能と数量を制限してしまった
☆:あらゆるレベルで戦力の締め付けが行なわれたんですねーっ
S:だが、仕方が無い事だ、対応策を考えよう
  まずは、条約制限である1,500t以内で駆逐艦を造る
☆:でも、特型でも要求性能に航続力で届かなかったんですよ
S:だから、無茶をやった
  さらに、条約の制限外に目をつけたんだ
★:600t以下は無制限です
S:ここで「水雷艇」の名前を復活させて
  1,500t駆逐艦と同様に、豪快な無茶苦茶をやって詰め込んだ
★:そして、失敗しました

S:結論、条約制限では日本海軍の欲する性能
  つまりは巡洋艦並の外洋行動能力は確保できない、もっと大きくないと駄目だ
  武装を減らせば行動力は確保出来る、だが、それでは弱い
★:根底から作戦構想を改めるべきです
S:彼らはそうしなかった、条約脱退の道を選択するんだ
☆:そんなぁ〜、手段と目的を履き違えてますっ
S:勿論、条約脱退の理由は、この漸減作戦の為だけではないだろう
  理由なんて、幾らでもあるんだろう、そう思う
  ただ、これも理由の一つだったんだ

S:そして、条約制限から解放された日本海軍は
  特型駆逐艦ベースの大型駆逐艦群の建造を再開するんだ
☆:遂に・・・戦争へ・・・歯車が回り始めるんですね
S:同時に、特型駆逐艦多数という、日本海軍の願望も実現へと進みだすんだ




第二十九章『あなたの横顔』

S:さて、他国も従来型駆逐艦から新型駆逐艦へとシフトが始った
  英国は新しい駆逐艦シリーズを量産した
  性能的にはバランスとコストを重視した設計で、数量確保が重視されている
  これに条約制限の大型駆逐艦トライバル級を追加したんだが
  まあ、これは、特型対抗の火力重視型で、他は汎用型だね
☆:量産型は、第一次大戦末期の改W級から実質的に性能の変化が無いですーっ
S:駆逐艦に望まれる性能なんて、あんなもので充分だったんだよ
  誰かさんのような大それたことを夢想しなければね

★:英国の駆逐艦建造を出してみます

英国駆逐艦建造表

  退役は譲渡、事故、第一次大戦の戦闘損失等、全てを含みます
  M級以降で集計、新造艦には改W級以上の艦を含みます
S:この建造は、計画年度なので、完成は少しずれる
  退役は居なくなった瞬間で集計したんで、実際の戦力はちょっと違うんだけど
  まあ、傾向は掴めるだろ
☆:1930年代に入ってから、急速に新型へと置き換わりますねーっ

★:同様に、日本のも集計してみました
  日露戦争世代の旧式駆逐艦はカウントを除外しました
  新造艦の集計には、峯風系列の大型駆逐艦を含みますが小型は含みません
  特型と以降の艦艇別枠集計もしてみました
  条約制限艦は特型より劣ると思いますが、条約脱退後艦も存在するので
  平均して、特型相当と評価します

日本駆逐艦建造表


★:米国の場合です、平甲板型を従来型として集計しました

米国駆逐艦建造表

☆:悲惨ですねーっ、旧式ばかりですーっ
S:1941年計画で202隻を建造することで、急速に若返るんだけど
  これも不況と、平甲板型を作りすぎた結果だわな

☆:この集計って正しいんですかーっ?
S:数え間違いはあると思うぞ(ぉ

★:各国の世代交代の度合いをグラフにするとこうなります

三国駆逐艦建造表


S:各国の戦力を数で見ると
  英国が190隻、米国が240隻、日本が120隻ぐらいなので
  率だけで何かを述べるのも危険なんだが
  特に米国の戦力改善が大幅に遅れているのが判るね
★:それが、重巡洋艦に依存する形になったのでしょうか?
S:そうだね、旧式で小柄な駆逐艦では
  太平洋の作戦行動には不安が大きいし、戦力も弱体だ
  計算できない駆逐艦よりは、計算できる重巡洋艦に期待するのは当然だろう
  何しろ、日本は特型駆逐艦を造ってしまった
  日本駆逐艦は外洋で戦争できるけど、米軍の旧式艦にはその保証が無い
  ならば、既存の駆逐艦に特型の阻止を期待するのは、あまりにも危険な賭けだ

★:米軍の新造駆逐艦群は優れた全般性能と重武装を狙って失敗しました
S:日本の場合と同じだ、条約制限では全部は入らない
☆:結局武装を減らして航洋性を確保したんですねっ?
S:つまりは、戦力としての計算は成り立つけど
  戦力そのものは足りないという結果になった
  米軍が外洋行動能力と戦闘能力の双方を満足させた駆逐艦を得るには
  条約制限から解放された2,000t級の大型駆逐艦の建造が必要だった
  そう、日本の場合と同じだったんだ
☆:役者がそろいつつありますね

S:この新世代駆逐艦の特徴は何処の国でも同じだ
  外洋での行動能力を飛躍的に増大している
  敵の駆逐艦と対等に闘うためには、同じ土俵に立つ必要がある
  特型駆逐艦は駆逐艦の概念を変えてしまった、つまり土俵が変ったんだ
★:他国はそれに追随する必要が出てきたのですね
S:そして、気が付くんだ
  外洋行動能力に不安の無い大型駆逐艦は軽巡洋艦を代替できると言う事に
★:まだ航続力とか、火力とか、足りないのでは・・・
S:それは本質的な問題じゃない
  今まで、1万トンの重巡、5,000tの軽巡、1,000tの駆逐艦で分けていたことを
  2,000tの駆逐艦多数で殆どこなせるんだと言う事だ
  既に、1万トン重巡が、イミナシ艦だと述べたでしょ、あれは特殊な決戦兵器だ
  艦隊の戦力中核は軽巡洋艦+駆逐艦だ
★:それが大型駆逐艦で代替できると・・・
S:汎用艦隊型大型駆逐艦の時代がやってくるんだ

S:勿論、より大きな艦艇が、何か別の機能を持っているなら話は変るぞ
  だけど、やれることが同じなら、コストパフォーマンスが優れた物だけで良い
  戦争で一番必要になるのは数量だ
  必要な機能と性能をもった物を可能な限り多数、それが基本だ
  軽巡洋艦は数量が、従来型駆逐艦は性能が、それぞれ足りない
  これに合致したのは大型駆逐艦だったんだ
  大型駆逐艦を中心として、てこ入れとして巡洋艦を加えれば
  バランスの良い強力な部隊が完成する
☆:それって・・・日本海軍の水雷夜襲群の基本構成ですね
★:重巡4隻に軽巡1隻、大型駆逐艦16隻からなる夜襲群
S:別の言い方をするなら、その構成をする為に大型駆逐艦を造ったんだ
  忘れてはいけないのは
  この構成の主役であり主力は駆逐艦で重巡洋艦ではない
  主力戦車と支援用の軍団直轄重戦車の関係だと思えばよい
☆:巡洋艦の数量では駄目なんですか?
S:数は力だよ
  制御できる範囲なら、数は絶大な威力を持つ
  駆逐艦の大きさは、制御限界までの数量を確保することに繋がる
  10隻の巡洋艦と20隻の駆逐艦が闘ったら
  数量が二乗で効いて来るから、巡洋艦は4倍の戦闘能力を持っていないと負ける
★:重巡洋艦や条約型巡洋艦なら4倍の戦力は確保出来ると思います
S:でもって必要な資材は2.5倍だ
☆:効率悪いですね
S:しかも、決戦以外ではあちこちに戦力として配備できた方が便利だから数が欲しい
  同じ資材量なら5倍作れるんだ、有り難い事なんじゃないか?
  必要最低限の性能で最大多数、それをクリアできるのが大型駆逐艦だったんだ




第三十章『SOUND OF DESTINY』

S:ここで、時間を少し戻そう
  ワシントン条約の結果生まれた、日本の漸減作戦だ
  戦艦戦力の大幅削減と劣勢は
  迎撃戦闘の成功確率を極端に低下させることになった
  何故か
★:戦艦の数で劣るからですね
S:質もだね
  ワシントン条約で生存を許された日本戦艦の内4隻が巡洋戦艦だった
  ちなみに、戦艦保有数も少ないので、これは痛い
★:英国は20隻中の3隻、米国は巡洋戦艦を保有していません
S:つまり、日本は額面以上に正面切った殴り合いで、不利になった
☆:巡洋戦艦を遊撃兵力、戦艦を主力として
  両手として使うのなら問題は無かったと思いますーっ
S:そう、巡洋戦艦はその為に兵力だったんだが
  第一次大戦で特に巡洋戦艦の防御力に大きな問題が有ることが判明した
  これには防御改善工事で対策したんだが
  結果として単なる弱い戦艦になってしまった
☆:防御が改善したんですからーっ、ある意味それはそれで良いのでは?
S:速度が遅くなったから、遊撃兵力としての使い勝手が低下した
  つまり、戦力としての価値が低下したんだ
  戦艦として使うなら、他の戦艦と同じだけ走れれば充分だから
  それには速すぎ、つまり無駄
★:帯に短し襷に長し・・・
S:個艦戦力だけでは評価は出来ないって事だね

S:さて、つまり水上打撃部隊の能力が下がったのは判ったね
  そこで、敵艦隊の戦力を殺ぎ落としてから殴りあう事を考えたんだ
★:数が減っても相手が突っ込んでくると考えることが間違ってるような気も・・・
S:そうだね、そこが問題なんだが、まあ、それは置いておこう
  戦艦を撃破出来る兵器とは、戦艦主砲か魚雷しかない
  日本軍の魚雷は、ここで明確に対戦艦用として位置付けられることになる

S:手順を考えてみよう
  まずは早期発見だ
☆:偵察艦艇の充実に、航空機の支援も欲しいですーっ
S:当初の軽巡洋艦は航空機を搭載していなかったけど
  1930年代までに、主だった艦艇の殆どが何らかの形で飛行機を積むようになる
  航空母艦の建造も熱心に行なわれ、水上機母艦もそろい始める
★:これでかなりの偵察能力を確保しました

S:また、潜水艦の航続力増大と飛行機搭載も行なわれた
  これで、本土から出港した主力艦隊を長期間監視することを想定したわけだ
★:その潜水艦部隊のコントロールや支援をする部隊も必要です
S:これにも軽巡洋艦を当てる
  潜水艦隊旗艦になった軽巡洋艦は搭載機と無線機を武器に敵艦隊の監視と
  隷下潜水艦による襲撃を指揮するわけだ
☆:別に軽巡洋艦でなくても出来そうですーっ
S:この手のことに応える事が出来るのが、汎用艦艇である軽巡洋艦の利点だ
  確かに潜水母艦のような艦艇にそういった役割を期待することもある
  だけど、機動性を要求される漸減作戦では、この指揮艦艇の機動性も重要だったんだ

★:八八艦隊計画では潜水母艦を建造しましたよね
  以降は、有事に空母に改装するつもりもウソッコ艦しか造らなかったようですが
  潜水艦に多くを期待しなかったのではないでしょうか?
S:日本軍の潜水艦は、第一次大戦後、急速に大型潜水艦になっていくんだ
  潜水艦伝習所に出ているような、長大な航続能力を持ったものにね
  もう、母艦は要らない
  欲しいのは情報をやり取りして指示をしてくれる指令艦艇だったのさ

S:こうして潜水艦が敵艦隊発見の報を出した
  場合によっては長距離偵察機なんかも使って敵艦隊の動向をチェックする
  次いで、潜水艦や哨戒飛行艇なんかで接触を図り
  情報の確度を上げつつ、敵の侵攻意図を推定し、迎撃地点を定める
  こうして、主力も含めた大規模な迎撃部隊の出動だ
☆:あははーっ、まるで日本海海戦ですーっ
S:潜水艦が多少は何かしてるだろうけど
  基本的にスーパー大規模な敵主力にそのままぶつかるのは芸が無い
  負けちゃうね
  だから、決戦の前日っていうか前夜に水雷襲撃を敢行する
★:夜間に襲撃するのは、敵の居場所を確認するだけでも大変です
S:だから、夜間用偵察機を開発した
  軽巡洋艦に搭載された夜偵は、夕暮時に敵艦隊に接触し
  可能な限り動静を連絡して触接を行い
  薄暮から日没まで、しっかりと情報を送りつづけ、味方艦隊を誘導する
  襲撃が始ると、照明弾を投下して敵艦隊を照らし出す
☆:重要な役割ですねーっ
S:成功確率のかなりの部分を、この夜偵が握っていたんだな
  当初は厳しい要求性能もあって実用化が出来なかったんだが
  極めて出来のよい汎用水上偵察機の登場で解決した
★:飛行機の開発成功で、触接は出来ました
  となると、問題は襲撃時の戦力ですね
S:前にも書いたけど
  特型駆逐艦の登場で、襲撃に持ち込むことは可能になった
  次は戦力だ、特型は強力だけど、敵の迎撃戦力も大きな物が予想される
  そいつらと遊んでいたら主力を攻撃できない、突破するだけの戦力が欲しい
★:そこで、日本軍は重巡洋艦をこれに加えることで
  力任せに前衛兵力を排除する方向に踏み出すのですね
S:だから、日本は重巡洋艦戦力の充実にも努力した
  重巡洋艦は必要となったら雷撃まで行う事で、突撃路を切り開く
  この時、自らの安全は放棄することも求められていた
☆:つまり・・・盾になると?
S:そう、一個水雷戦隊に組み合わされた一個重巡洋艦戦隊は
  自らの命と引き換えに水雷襲撃を成功させるつもりだったんだ

S:もっとも、これだけでは、安心できない
  日本軍は重巡戦隊一個を夜襲部隊直轄として用意して
  作戦全般指揮に当てることにした
  つまりは、一番の要所に突っ込んで引っ掻き回すつもりだったんだ
  更に第一艦隊から高速戦艦部隊である第三戦隊を借りることにもなっていた
☆:高速戦艦部隊って・・・・あの巡洋戦艦群ですよね?
S:そう、金剛型巡洋戦艦だ
  大規模な改造で、往時の巡洋戦艦としての能力を取り戻したんだ
☆:生まれ変わったなら、もう一度遊撃部隊主力として構成すればよいと思いますーっ
★:規模や構成は多少違いますが、往時の八八艦隊の再来としてですね
S:そう、戦艦と巡洋戦艦の大火力を打撃中核にした
  正当な水上戦闘を考えるのが正道だよね
  でも、そうはしなかった、そう考えなかった
  まあ、その理由は後で考察しよう、今は水雷突撃だ、横を見る暇は無い

★:はい・・・じゃあ、話しを戻しましょう
  そこまでして水雷戦隊を突入させるとして
  その雷撃が当たるのかが疑問というか、重要ですね

S:日本軍は当然雷撃の成功率を上げるために色々工夫していた
☆:今までのは正確ではなかったのですか?
S:正確に照準できれば、問題なく当たるよ
  だけど、あたりまえだけど、これは
  目標がまっすぐ進んだときでしかない
★:まさか・・・
S:そのまさかだ
  目標の回避能力から想像される移動範囲を算出して
  それを塗りつぶすように発射する方法を編み出したんだ
  敵艦が取りうる選択肢(つまり操舵と加減速)の未来位置の大半に
  どれかの魚雷が交差するようにだ
  つまり避けられない
☆:あ、あははーっ・・・惨いですーっ
★:回避可能範囲全てですか?
S:予想される行動範囲は、距離によって拡大する
  つまり、この方法は遠距離になると、魚雷の網が拡散してすり抜けられるとか
  もっと大胆な運動で、予想範囲外に抜けられる可能性が増大するんだが
  まあ、10本弱放てば、数千mだったら、どれかが引っかかる
  散弾銃で撃つようなもんだな
★:でも、そんな事出来るんですか?
S:魚雷の照準とは、極めて単純な幾何で計算できる
  これで、直進してる艦艇に対しては照準できるね
  魚雷の性能は決まってるんだから
  見越し角度算定用のグラフを作成する
  速度がこうで、方位がこうなら、この角度にしろとグラフを見れば一発でわかる
  次に、目標の行動パターンを加えた物を作る
  この角度だとこう、この角度だとこんな感じってね
  それを合わせると、標準照準線と開度が簡単に算出できる
  グラフと鉛筆で出せる
  考えてみれば単純な話だ
★:ポイントはパターンを予め作成しておくことですね
☆:まさか本当に回避範囲まで予想して潰すなんて思いませんでしたーっ
S:判ったかな近距離で放たれた魚雷は当たるんだ
☆:確かに、これなら、戦艦だろうが撃破出来ますね
S:日本軍は一個駆逐隊で一隻の戦艦を食うことを目的としていた
  最大規模の夜襲だと、10個以上の駆逐隊が参加するから
  10隻以上の戦艦を撃破出来るだろう、もう自信たっぷりだ
★:如何にして水雷戦隊を送り込むか
  戦術的な課題は全戦力を投入することで可能
  水雷戦隊の行動能力は新型駆逐艦で確保
  航空機搭載潜水艦で敵艦隊の動向確認も可能になった
  確かに成功確率は高いですね

S:だけど漸減作戦は急速に変化し始めるんだ

☆:はぇ?
  漸減作戦は、やっぱり駄目っぽいと?
★:何か根本的なミスがあったんですか?
S:いや、そうじゃない
  こう言い換えても良いだろう、水雷襲撃部隊は強くなりすぎたと
  気が付いたら大人になっていたんだ
  さっき、金剛型を水雷夜襲に回す事で
  正当な水上打撃戦を放棄した可能性が見えたよね
  そう、彼らは、主力をすり替え始めたんだ
  そして、それを決定的にしたものが酸素魚雷だった

S:大艦巨砲主義を有る意味否定したのが日本海軍の水雷夜襲構想だった
  大艦巨砲主義を子供じみた妄想と憧憬の産物とするなら
  水雷夜襲とは計算と諦観、言い換えるならギャンブルだ
  やっぱ大人になってからだな
☆:そして、その大人への最後の階段が酸素魚雷でしたーっ




第三十一章『笑顔の向こう側に』

★:えっと・・・私は、まだ15歳なのですが、良いのですか?
☆:あはははーっ、佐祐理が許可しますーっ

S:酸素魚雷だ、これは優秀な戦術兵器では無い
  第二次大戦初期のドイツ軍の戦車部隊と同じで
  戦術的側面よりも、もっと戦略的な側面を見るべき兵器だと言える

S:魚雷は湿式になることで、基本的に完成された兵器となった
  空気は動力源から、燃焼の為だけのものになった
  となると、後はどれだけ良く萌えるか
★:字が違います
S:どれだけ燃えるかは、タンクの中の酸素の量に依存する
  普通の空気と純酸素で比較すると
  同じ容積だったら、ずっと多くの燃焼をさせることが可能になる
  極めて簡単な理屈だ
  つまり、タンクに酸素だけを詰めた、酸素魚雷が完成する
★:単純に考えて、4〜5倍のタンク容量を持ったのと同じことですね
S:タンクを小さくして炸薬量に振り向けることも出来るし
  馬力を生かして速度を向上させることも出来る
  そして、これは、単なる高性能魚雷では終わらなかった
☆:魚雷であることには変らないですよーっ
S:航跡が殆ど残らない
  つまり発見される率が低い
★:完全に燃焼すれば、排気は炭酸ガスですから水に溶けます
  実際には溶けるのに時間が必要ですし
  スクリューのキャビテーションもあって、航跡は残りますが
  まず発見困難でしょう
S:この魚雷は色んな書物で紹介されてるから、これ以上は触れない
  重要なのは、この酸素魚雷がもたらした事態だ
  まあ、今更とは思うが、酸素魚雷とそれまでの90式
  それに米軍のMk.15魚雷の性能を出しておこう、美汐ちゃん
★:はい、では・・・
名称 口径 全長 重量 炸薬 速度/距離
93式魚雷 610mm 9.0m 2,765kg 492kg 48kt/22,000m
40kt/32,000m
36kt/40,000m
90式魚雷 610mm 8.6m 2,605kg 373kg 46kt/7,000m
42kt/10,000m
35kt/15,000m
Mark15 533mm 6.25m 1,740kg 374kg 45kt/5,500m
33kt/9,150m
26kt/13,700m

☆:高性能で良い事なのではないですかーっ?
S:魚雷は、接近して撃つものだね
  では、それは何故かな?
☆:射程が短いからですねーっ
★:発見されて回避されるから?
S:酸素魚雷は、この二つを解決した
  だけど、到達するまでに時間がかかるという問題はクリアされていない
  相手が魚雷に気が付かなくても、舵を切る可能性は有るよね
  たぶん、これは時間の長さに比例するだろう
  勿論、発射時の観測誤差による命中率の低下も射程の長さに依存する
  つまり、長射程魚雷は、見つかるとか見つからない以前に命中率が悪い

☆:舵を切られても問題ないような襲撃方法を考案するとか?
S:例えば?
☆:えとえと、射程が長いと言う事は
  一つの目標に対して、多方向から襲撃することが容易になります
  一度に沢山投射すれば、遠距離でも回避範囲も含めて塗りつぶせます
  外れても、艦隊が相手なら、隣接艦艇に当たることも期待できます
★:大量投入による投網ですね
☆:何か大型艦なんかで相手の気をそらして
  戦術運動をこちらの予測範囲に押さえ込むというのもありそうですーっ
★:おとりとなる餌が必要ですね

★:多方向の襲撃には戦力が欲しいです
☆:あ、でも、戦力そのものは従来と同じで構わないでしょう
  攻撃能力は多方向攻撃で向上するのですから、減らしても良いぐらいですーっ
S:そうだね、戦力はそうだ
  だけど、敵艦隊を挟んだ向こう側の味方が同じ指揮下にあると思うか?
  だから、部隊数は増えるだろう
☆:多数の部隊で統制攻撃・・・それも夜間・・・困難ですね
  訓練で問題が発生しそうですーっ
S:佐祐理さんが言った、大物の投入も考えられたよ
★:まずは金剛型巡洋戦艦の高速戦艦改装と夜戦への積極的投入ですね
S:巡洋戦艦の火力なら、前衛どころか戦艦にもダメージを与えられるね
  夜戦の支援戦力としては最高だ
  だけど、敵がそれに気がついてくれないと囮の餌にはならないし
  巡洋戦艦では耐久力が無くて、長時間の囮には向いていない
  第一奴等は前衛排除に忙しくて、囮までやってられないんじゃ?

☆:あのー・・・
S:ん?
☆:主力戦艦を使うのは駄目ですか?
  敵が気づいてくれるように、明るいうちに戦艦で相手の注意を引き付けて・・・
S:ご名答、そうだね、明るい内なら統制も可能だし、ばっちしだ
☆:あははーっ、やりましたー佐祐理でも判りましたーっ(^^)
S:でもさ、主力まで使ったら、漸減作戦かい?
  これって昼間決戦じゃないの?
☆:あ・・・
S:それにさ、夜襲をするのは、敵の防衛火力より魚雷の射程が短いからでしょ
  見えないから撃てないんだ
  じゃあ、酸素魚雷も撃てないのでは?
★:夜襲の否定ですね
S:夜襲そのものの有効性は否定しないよ
  ただ、酸素魚雷の長射程とは相反するわな

S:日本軍も色々と迷ってはいたようだけどね
  酸素魚雷の開発成功は、漸減作戦そのものの特性を大幅に変化させることになるんだ
  接近して、個艦、駆逐隊単位での攻撃から
  戦隊、もしくは艦隊単位で膨大な量を放ってもみ潰す方向に変ったんだな
★:対艦ミサイルの飽和攻撃みたいですね
S:そうだね、無誘導だけど、イメージとしては近いかもね
  この攻撃方法の場合、望まれるのは?
☆:方位攻撃をかけられるだけの高速性能に
  とにかく多数の魚雷搭載ですーっ
★:重雷装艦ですね
S:そして、戦艦が餌になる、おいおい主力って?
☆:戦艦・・・可哀相ですーっ(;_;)

S:ま、いきなり急速に変化したわけではないよ
  ただ、全体的な流れは、艦隊に酸素魚雷が行き渡り
  その運用を様々な角度から研究を行う事で
  方向性が変化していると見ても良いだろう
  夜襲の放棄も含めて、決戦の組み立てが急速に変化しつつあるのは事実だ
  そして、その変化する決戦の中で、戦艦は急速に地位を失い始めたんだ
  個人的には、たぶん超大和級戦艦は無かったんじゃないかと思う
  もう、日本軍は戦艦を捨て始めていたんだ




第三十二章『避け得ない悲劇』


S:結局、砲戦で勝てないので
  砲戦以外で戦果を上げようとした結果
  砲戦専用の戦艦の立場がどんどん無くなって行くんだ

★:大型駆逐艦と軽巡洋艦の下位が一体化して
  軽巡洋艦の大型化は、一定以上では事実上意味が無く
  そして、大型戦闘艦艇、戦艦すら、その魚雷で存在を否定される方向に向かう
  戦艦の否定ですか・・・
☆:戦艦の火力の魅力は?
S:魚雷の大型化で幾らでも補えるぞ
  そして、その魚雷のプラットホームは何でも良いんだが
  水上艦艇を用いるなら
  何処にでも派遣できるもの
  つまり、巡洋艦としての機能を最低限に備えている物がベストだ
★:そして、それは、特に日本軍の場合、駆逐艦で充分に達成されてしまいました
S:本来偵察巡洋艦しか往かないような遠方に、駆逐艦部隊を投入するという無茶が
  それに応えてしまう駆逐艦を生み出してしまった
  この時点で、巡洋艦の重要性は低下するね
  駆逐艦との違いは戦力だけだ、戦力と言っても、双方が出来る事に大した違いは無い
  水雷夜襲戦術と戦力の向上は
  戦艦を持たない艦隊が、戦艦を中心とした艦隊に勝つ可能性を生んだ
☆:日本軍の夜襲部隊は戦艦以外の全艦艇で行ないますね
S:これは戦艦の存在を否定したのと同じ事だよ

S:次に酸素魚雷の登場は、駆逐艦に戦艦と同じだけの射程距離を与えてしまった
  結果的に戦艦の最大の売りだった射程距離の優位が崩れる
  この時点で、日本軍の殆どの艦艇は、いつでも戦艦に対抗できることになる
★:でも、遠距離の雷撃では当たらないのでは?
S:沢山使う
  誘導魚雷にする
☆:沢山はともかく
  誘導なんて・・・そんな・・・無理ですよーっ
S:航跡追尾魚雷は日本でも研究していたぞ
  実験では成功してたらしいから
  もうちょっと時間が有ったら誘導魚雷が配備されただろうな
☆:なんて無茶苦茶な世界
S:あの時、あのタイミングで始まったから、ああいう流れだった
  もうちょっと前、もうちょっと後、始まりが違ったら
  最終結果はともかく、また違ったシーンが見られたかもしれないね

★:航跡追尾式酸素魚雷を搭載した大型駆逐艦群の統制雷撃・・・
☆:仮想戦記ですね、火葬かな?
  でも仮想戦記では戦艦大活躍ですよーっ
S:まあ、判断は人それぞれだ
  だけどね、2,000tの甲型駆逐艦20隻と4万トン戦艦1隻だったら
  どっちのほうが強いんだ?
★:酸素魚雷が8*20で160本を二回、320本、命中率5%で16本・・・
☆:大和でも沈みますねーっ
S:取得や維持のコストで考えると簡単に比較してよい物かどうかは悩むけどね
  水雷襲撃戦術の進歩と、魚雷の飛躍的性能改善は、戦艦を過去の物にしたんだ

S:戦艦を捨てた理由はもう一つある
  アレの発達が、戦艦に引導を渡したんだ
☆:航空母艦ですね
S:正確には飛行機だ



第三十三章『鳥の詩』

☆:日本軍は空母も漸減作戦で使うことにしたんですよね
S:最初は索敵、そして戦場上空の制空権確保、それに敵の空母潰しだ
★:なんか、一部で言われてるのと違いますね?
S:いいかい、最初は戦艦が全ての軸だったんだよね?
☆:だから索敵は判りますーっ
S:戦艦が遠距離砲戦する場合に必須なのが観測機だ
  これが使えると大幅に有利になるのは判るよね
☆:だから戦場の制空権確保に当たるんですねーっ
S:そして制空権獲得に最高なのは?
☆:飛行場潰し・・・それで空母襲撃ですかっ?
S:急降下爆撃機の登場で、爆撃精度が上がり、これで艦艇を叩けることがわかった
  ただ、戦艦はとても食えない、だけどそれ以外なら?
  空母の飛行甲板なんて楽勝だよな
  日本軍は急降下爆撃機に敵空母の制圧を期待し
  また、それを防ぐ、つまり装甲空母の開発を始める、大鳳だ
★:米軍がそれを期待したんではないのですか?
S:違うだろ、連中の急降下爆撃機は索敵機だもん
  索敵に使うって事は、攻撃に使えないってことだよ
☆:でも、爆装して偵察してますよ
S:索敵機が敵に遭遇する確率はどれぐらいあるんだ?
  せいぜい数割だろ?
  100機の索敵機を出して、それが敵に遭遇するのが10機
  これは10機の攻撃隊を出したのと同じじゃないか?

S:話しを戻そう、日本軍は空母で敵空母を叩くことで
  敵航空機による様々な妨害を排除し、水上戦闘を有利に導くことを期待したんだ
☆:この時点では、重要ですが決定的な物ではないのですね
S:これは艦上攻撃機の開発成功で大きく変化する
  つまりは雷撃だ
  戦艦を攻撃することが可能になったことで、第二目標に戦艦が加わる
  まずは制空権獲得、これで最悪でも味方艦艇は有利に闘える
  次に、戦艦を減らす、そうすれば、艦隊決戦での勝利の可能性は大幅に向上する
☆:漸減作戦ですねーっ
S:重要なのは、まずもって、制空権の獲得が上げられていたことだ
  だから、最初の目標は『敵空母』だ
  空母の攻撃圏の広さに対抗できるのは空母だけだからね
  戦艦を叩くことは他の艦艇でも出来る、だけど空母は空母でしか叩けない
  艦隊決戦の帰趨は敵空母を始末できるかどうかで決まる
☆:あの・・・
  これって、戦前の構想ですよねーっ?
S:そうだ
  もう、日本軍は、戦艦なんかどうでも良くなり始めていたんだよ
  戦艦は既に、誰が何をしても食えるような、目標になってたんだ
  怖いのは空母だ
★:空母の攻撃圏の広さが、水上艦をアウトレンジするからですね
S:日本軍は戦艦と同等の攻撃圏を持つ酸素魚雷を作り上げることで
  戦艦を無敵状態にしていた要素の一つを消滅させた
  酸素魚雷を運用できる外洋艦艇は腐るほど存在する。もう、戦艦は怖くない
  そして、航空魚雷が洋上戦に介入することで水上艦を駆逐することになる

S:怖いのは空母だけじゃないんだよ
★:陸上攻撃機ですね
S:洋上の艦隊戦に介入できるだけの航続性能を持った攻撃機の登場だ
  これで空母もあまり要らなくなる
  少なくとも防衛に徹するなら無くても何とかなるね
☆:空母の方が有利だといわれますが?
S:馬鹿言うなって
  空母は高いんだ
  その分飛行場と飛行機に回した方が航続範囲内なら飛行場の方が強い
  日本軍が陸上攻撃機の整備に熱心だったのは、それが空母より安いからだ
★:あんな航続性能が必要だったのでしょうか?
S:必要だ
  敵艦隊は何処に来るか判らないんだ
  それに対応するには、何処に来ても届くだけの航続力が必要になる
★:空母に空母で対抗するのは?
S:戦艦で戦艦に対抗するのと同じだ、数が多い方が勝つ
  条約の制限量、国力、どっちを取っても空母の数では日本は負ける
  戦艦に水雷戦隊で対抗したように、陸上機で空母に対抗することを考えたんだな
  別に敵の空母を叩けなくても良いんだぞ
  味方空母の仕事の一部を肩代わりするだけでも、かなり助かる
★:戦艦が防衛用、戦闘補助用に駆逐艦を使ったように
  空の駆逐艦として航空機を汎用兵器として運用するんですか・・・

S:航空魚雷の登場は、航空機が艦艇を叩ける事になった
  当初の魚雷搭載機の行動能力は貧弱で、初期の水雷艇と同じような物だった
  だが、水雷艇や駆逐艦が何十年もかけて踏破した階段を
  航空機は20年で踏破してしまった
☆:随分と短いですーっ
S:この発展速度の速さこそが最大の脅威だったのかもしれないね
  水雷戦術と魚雷の発展が掴んだ居場所を一瞬にして奪い去ってしまった
★:日本の努力は無駄だったんですね
S:それは結果論だと思う
  実際に、戦艦放棄の方向性を既に持っていたことが
  第二次大戦において日本軍が戦艦放棄を比較的早期に行なえた原因かもしれない
☆:既に萌芽はあったのだと?
S:でだ、これは戦艦放棄ではあっても
  水上戦闘艦放棄では無かった事に注意してくれ
  後生大事に水雷艦艇の建造は続いていたことからも想像できると思う

S:駆逐艦が戦艦や巡洋艦をイミナシに出来たのは
  戦艦や巡洋艦と同等の行動能力と同等の攻撃能力をより安価に確保したからだった
  ならば、航空機が同等の行動能力と対抗できる攻撃力を持ったなら
  それが艦艇より安価なら、艦艇の存在意義は大きく揺らぐことになる
  これが第二次世界大戦だった
  第二次世界大戦で戦艦が消えた?、違う
  戦艦は特型駆逐艦と酸素魚雷の開発で消えていたんだ
  第二次世界大戦で消えたのは、水上戦闘用艦艇だったんだ
☆:じゃあ、魚雷も?
S:水上戦闘用兵器としての魚雷はそうだね
  軍艦の任務から対水上戦闘の重要性がどんどん低下したんだ
  第二次大戦中期以降、魚雷を下ろす艦艇が続出する
  酸素魚雷を持っていた日本軍では、主砲を先に撤去しだすけど
  どっちにしても対水上打撃能力の向上が止まったのは事実だ




最終章『みつめていたい』

S:第二次大戦直前
  日本軍は自分たちが何を作り上げてしまったのかを理解していなかった
  もう、世界は変ってしまったんだ
  でも、誰も気が付いていなかった
  その暴走の始まりが太平洋戦争だったんだ
☆:真珠湾攻撃ですね
S:まあ、一種の艦隊決戦だったんだろうね
★:なのに戦争には勝てませんでした
S:やられた側から見たら事故
  負けたとは思ってない
  負けてないのに戦争が終わるはずは無い
  美汐が言ったように、数が減ったのに出てきてくれるはずも無い
  数が揃ってから出てきて、それに勝てなくて戦争は終わった

★:じゃあ真珠湾攻撃ってなんだったんでしょう?
  結局無意味でしたね、手の内を晒しただけで
S:当時の日本軍の抱えていた不安を思えばよい
  艦隊決戦に敵が向かってきてくれる保証が無いんだ
  日本は米国を信じてあげられなかった
  あんなにもお互いを見詰め合っていたのに
  最後の最後に信じてあげられなかった
☆:裏切ったんですねーっ
S:そうだ
  日本は米国の信頼を裏切った
  不安だったんだ
  国力で勝る米国は他の手段も選択できる
  疑心暗鬼に陥ってしまった
  日本海軍は自分がどんなに魅力的だったのか判っていなかったんだ

S:勝てるかどうか判らないときに、なんとかして勝ってしまおうと言うのが
  日本軍の夢想であり妄想であり、それにだけ努力してきたんだ
  それを否定したのだから、ボロ負けするのは当然だったんだな
  戦略的な意味すら内包していた酸素魚雷は、結局単なる優秀な戦術兵器に貶められ
  今では、そんな物も有ったねって事になってしまってる

S:技術の発展の速さを感じるね
  既に魚雷は過去の兵器になりつつある
  もう戦場を変える力は無い
★:射程も速度も、それに誘導もあるのに?
S:魚雷とは、対艦兵器だ
  より優秀な対艦兵器が登場したら、もう居場所は無いんだよ
  それに対艦兵器自体がそれほど重要な位置付けを持っていないんだ
  魚雷の時代は、その獲物である、戦艦が消えたとき、終末を迎えたんだ





戯言『Last regrets』

S:ふう、ここで取り合えず終わり〜
★:航空雷撃とかはやらないんですか?
S:そのうちやります

★:どうせ前編は書き直しなんですよね?
S:あれは、まあ、ミスの修正を行なって・・・
  直すって言っても、別に、あれはあれで・・・
☆:でもボリュームが大分違いますよね?
S:アレはね、俺的にはすげえ上手くまとまってるんだよ
★:一部にミスがあります
S:うん、それは直す
★:なんで、他はこんなに長いのですか?
S:まとめる能力の問題というより
  自分で、どこまで語るべきなのかを理解していないからだね
☆:一応、これでも、相当短縮しているんですよねーっ
S:だけど、もっと簡潔にまとめないと行けないよね
  だから、第二版をそのうち出します
  それは、たぶん前編は少し太ると思うけど、他はもっと減ります
★:やはり半分ぐらいにしないと・・・
S:無茶だ、たぶん2/3ぐらいがせいぜいだ、俺の出来なんてそんなもの(;_;)

★:飛行機が簡易にしか触れられてませんね
S:魚雷を軸にしたら、こんなものだよ(ぉぃ
  いや、かたるべきは沢山有るよ
  だけど、未洗練なんだよ
  俺の中でも、実際の戦場でも、だから概要を述べる以上は無理だし
  そんなの、そこらで幾らでも入手できることだからね
★:幾つか実例の挙がっていた各海戦の実態とか
  そういったモノは?
S:それこそ、戦記なり記録なりをあさって欲しい
  今まで述べた物は、それらを理解するのに、それなりに役立つだろうと思いたい

★:雷撃というよりは、軍艦概論ですよね
S:最後に述べたように、魚雷は軍艦攻撃兵器なんだ
  軍艦の意味を知らなきゃ、魚雷の意味は判らない
  単に勇ましく突っ込むことが魚雷攻撃じゃないんだ

★:壁紙が妖しいのは何故ですか?
S:もうちょっと緑が濃いと良いですな、うん
★:なんで、アレなんですか?



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