103 いわゆるフランジブル弾について教えて下さい。
20〜30mm機関砲のフランジブル弾は、命中後硬くて重たい材質の弾頭が細分化され面での破壊と奥行きのある損傷の両方を与えるもので、言い換えると脆い部分と堅固な部分が混在する航空機や対艦ミサイルに対して、徹甲榴弾と同様な効果を与えるのをよりシンプルな構造で狙ったものである、との理解で良いでしょうか?
小火器用の同名の弾薬と若干機能や目的が異なるように思えますが、教えて下さい宜しくお願いします。
ニワトリ

  1. 所謂 口径20mm以上の”砲弾薬”は私の勉強範囲外ですが、
    例えば ”FAPDS”(Frangible Armour Piercing sub-caliber Discarding )
    でウエーブ検索すれば 色々と発見されます。

    1例として その弾薬例とカタログ効能書き、画像。
     http://www.oerlikoncontraves.ch/e/produkte/munition/m_3g.htm


    ※ 一般に、銃・砲の弾頭をフランジブル化するという事は、良くも悪くも
      ”軽量弾頭となる” ”弾頭構造強度が劣る:打ち出す時にも脆い”
      の方向になりやすいと言えるでしょう。

    後は博識な大砲屋さんのフォローをお願いしましょう。

    軌跡の発動機?誉

  2. 博識な人ではありませんが判る範囲で。

    まず考えなければならないのはダメージ云々ではなく、対空機関砲用APDS弾とHE弾との違いです。誤解を恐れずにバッサリと言い切ってしまえば、HEとAPDS弾では後者の方が1.5倍乃至2倍(条件によっては3倍以上)程度の直撃確率の差があります。

    それは何に起因するのかというと、弾頭重量をその原因とした砲口初速及び方向初速の違いから発生する砲外弾道の長さからです。そして、その違いは発射からターゲット位置に到達するまでの時間差Δtに現れ、そのΔtの大きさは未来位置の不確定要因となり、それは命中確率及びミス・ディスタンス(射撃偏差)という具体的な数値で表れ、評価されます。

    まぁ、そのミス・ディスタンスの大きさをフォローするためのHE弾頭の時限信管及び破片散布な訳ですが、近年では航空機の対脆弱性設計が進んだ故の小・中口径での迎撃までに要する弾数が増える傾向にあるのです。何しろHE弾頭は広範囲に破片をばらまかなければならないため、単位面積あたりの平均被損傷率が低いという本質的な欠点を有しますので。

    とはいえ、APDS弾は砲口初速の高さ故の命中率の高さは期待できますが、1)距離(正確には存速)によって威力が変化する、2)点のダメージになるので命中時における損傷率に大きなばらつきが発生するという欠点を有しています。それをどうするか?という命題に対する回答の1つがFAPDSな訳です。

    #以上の説明から判るように、FAPDS(近距離)とHE(遠距離)はお互いに補間し合う関係です。

    と、言うわけでFAPDS弾の成立過程について説明した訳ですが、次に破壊過程について説明します。

    FPADSについては色々論文が出ていますが、そこに記述されるダメージ領域は入射地点を頂点とした円錐状のものです。つまり、弾着時の衝撃(もしくは曲げモーメント)による弾芯の破壊及び飛散→飛散した弾片の内部機体構造への着弾→弾芯の更なる破壊・飛散…という過程(副次生成破片が威力を失うまで)を示します。しかも、ほぼ一方向への発生です。

    この方向性のある容積破壊というのが徹甲榴弾による破壊との大きな違いになります。HE弾ならば広範囲に威力をばらまくのに対し、FAPDS弾はHE弾に比べかなり指向性のある破壊になりますので、よりメンバを破壊しやすくし、重要コンポーネントを抉る。そして高いPK率・より少ない撃墜必要弾数という数字で表れてくるのです。

    もの凄く簡単に言うと、比較的近距離ならば命中率も高いし、ダメージも大きい。しかも指向性のある容積破壊が期待できるのがHE弾との違いであると言い切っても差し支えないと考えます。
    sorya

  3. >1.2.皆様ありがとうございます。とても参考になりました。

    >sorya様
    確認なのですが、目標に損害を与える弾片の総重量もFAPDS弾の方が通常のHE弾やAPHE弾より大きいと考えて良いのでしょうか?
    ニワトリ

  4. 違います。
    FAPDSの方が適度な指向性がある分だけ効率的に構造を抉るだけのことです。
    無理に例えれば、一般的なHE弾頭と子弾内蔵型HE弾頭との違いに相当します。
    sorya

  5. 了解しました。
    ありがとうございます。
    ニワトリ

  6.  便乗質問失礼します
     FAPDS弾は、AHEAD弾と非常に良く似た効果を持つように思えるのですが、両者を使い分けるとした場合、何か明確な区分基準(←この場合なら、FAPDSが有利だとか、そういった条件の事です)が存在するのでしょうか?
    セミララ

  7. AHEADはHE弾の亜種もしくは直系と考えた方が良いです。HEとちょっと違うところは大量の炸薬を持たず、ほぼ自弾の回転による遠心力により多量の調整破片が散布されるシステムであり、それ以外の特性はHE弾に準拠します。つまり、比較的低速弾であり、かつ指向性のある破片散布を行う指向に調整されたのがAHEADです。

    この性格から考える限り、比較的低速な機体(攻撃ヘリ含む)、既存のあまり対脆弱性設計が進んでいない航空機等への(比較的)中距離までの対処ならばAHEADになるでしょう。但し、この弾種は目標位置に達する前に破片を放出しますので、ミサイルを併用した複合攻撃は非常に難しいと考えます。
    sorya

  8.  御回答ありがとうございます

    >ミサイルを併用した複合攻撃は非常に難しい

     これは、AHEAD弾を使用した対空機関砲と、対空ミサイルとの、両者による同時迎撃が難しいという事なのでしょうか?
     また、その場合、何故そうなるのでしょうか?
    セミララ

  9. 破片の散布域が特定できないため、飛翔経路を予め誘導をしたとしてもAHEADの破片を浴びてしまい、結果ミサイルが機能不全に陥ったり、最悪誤爆する可能性が非常に高いからです。AHEADに関してのみ言えば、高発射レートの1機関砲をもっての時間差射撃を行う事が正しい運用法であると言えます。
    sorya

  10.  (多分)理解できたと思います
     ありがとうございました
    セミララ


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