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砲兵戦術講授録 原則之部

第一篇 世界大戦に於ける砲兵

現代の砲兵を理解せんには世界大戦に於て独仏両軍の実施せし砲兵用法の変遷を検討するを以て捷径とす、然れとも國軍砲兵の用法は神速機敏なる指揮運用並に戦機に適合せる戦闘準備及戦闘に存するを以て世界大戦中の陣地戦に関する諸教訓を曲解し状況の如何に拘らす綿密組織的の計画立案に没頭して戦機を逸し指揮鈍重となるか如きは最も戒むへきものなるを以て之等の点に就ては誤解なきを要す

第一章 世界大戦前の仏軍砲兵

世界大戦前仏国は極度に機動及攻勢を主張し寧ろ火力無視と思惟せらるる程度に攻撃精神を鼓吹せり従て砲兵用法も此の思想に基き火器の効力に対し正当なる理解を有せす砲兵に大なる期待を屬せさりき

而して過去戦役に於ける歩砲火の死傷数の統計は仏軍砲兵用法の理由を裏書きするものの如し今之左に示さん

一九一○年発布の野戦砲兵操典は 「砲兵は掩護なき活動目標に対して大なる効力を有す然れとも破壊効力の発揚は困難にして比較的少数の砲弾を以てする制圧の効果は某時期間のみ有効なり」 と称し砲兵に依る攻撃準備は効果なきものとして断念し掩護下に在る敵を暴露せしむる為歩兵を以て攻撃し砲兵は之を射撃す即ち砲兵は攻撃を準備せす唯攻撃を支援し対砲兵戦の如きは無用なりとせり

然れとも仏国砲兵は一八九七年速射七五密砲(着発八、五○○米 曳火五、五○○米)の採用に依り其の威力は野戦に於て如何なる任務にも適すと確信し二百米の正面には四門編制の中隊を以て充分とし之以上の火力は必要なしとせり

又砲兵は歩兵の直接支援に任すへきか故に射程は三、四千米にて足り良好なる眼鏡を以てする観測は四、五千米を限度とすと、斯くて八千米以上の射程を有する七五密砲も照準機は最大限六千五百米なる如く構造せられたり

野戦に於ける障害物は軽易なるへきか故に重砲の必要を生すること稀にして二師団より成る軍団正面は平均約六粁なるを以て其編制内に砲兵三十中隊を有すれは可なりと信せり

動員直後野戦軍に配属し得る総砲数は野山砲三六○○門野戦重砲三○八門なり

砲兵の指揮機関は軍団砲兵司令官を有し自ら野砲四大隊(一大隊は三中隊、中隊は四門より成る)より成る軍団砲兵を指揮し時として某師団の砲兵群を指揮することあり師団砲兵現役師団三大隊、予備師団二大隊、一大隊は三中隊、中隊は四門より成る)の指揮一大佐之に任し師団長と同位置に位置し陣地に在る諸中隊の指揮は一中佐之に任す

軍に於ける砲兵指揮は確立せられす数軍団砲兵の統一は軍司令官の区処に依るか又は関係砲兵司令官の協定に依るものとす

通信器材は各中隊及大隊本部に電話器二個及線五百米を有するのみ、砲兵の訓練は地形を利用する前進、陣地占領、不意迅速なる射撃開始共に巧妙の域に達し中隊長の射撃指揮亦可なり

徒歩砲兵の如き歩兵との協同を予想せさりし為歩兵戦術の思想に欠乏し野戦砲兵と一貫せる思想を有せす

野戦に於ける装備は一八九七年式七五密速射野砲、六五密速射山砲、一九○四年式一五五密速射短縮榴弾砲、一二〇密ばげー短加農、一八七八年式一二〇密ばんじゅ緩射長加農を有す

第二章 世界大戦前の独軍砲兵

世界大戦前に於ける独軍砲兵は速戦速決の運動戦を基調とし攻勢に必要なる火器の威力を認識し砲兵の効果を肯定し防御の必要をも認めたりき

従て七七密野砲(着発八、○○○米 曳火五、五○○米)の外に仏軍野砲兵の威力及遮蔽陣地よりする射撃に対し曲射砲の採用を必要とし一八九八年式一〇五密榴弾砲を採用し一九〇九年更に之を改造し速射、有盾且運動性良好射程六、四○○米、弾量十六瓩にして遮蔽陣地に在る仏軍砲兵を射撃することを得へく其任務は野砲と同一なるも殊に遮蔽砲兵、掩蔽目標、森林住民地の軍隊を射撃する点に於ては野砲に優れり又仏国の築城地帯を迅速に突破する目的を以て十五糎(射程七四五〇米)及二一糎榴弾砲、一〇・五糎(着発一〇、五○○米 曳火八、○○○米)及一三糎大射程加農を有す

其砲兵戦術思想は敵砲火の下に於ける歩兵前進の困難なるを認め歩兵戦闘と時期を異にせる対砲兵戦の必要を認めあり従て歩兵の攻撃前進開始前敵砲兵及障害物並支支点を破壊したる後決勝を求むる如く指導し野砲は重砲の掩護の下に歩兵を直接支援するの主要任務に服す

各師団は七七密野砲三大隊、一〇五密軽榴弾砲一大隊より成る連隊二個を以て編成せる野戦軽砲兵一旅団を属す大隊は三中隊一中隊は六門編成とす但し予備師団は一連隊とす

各軍団は編制上一五糎重榴弾砲一大隊(十二門)、各軍(四軍団より成る)には二一糎臼砲若干中隊を有す一軍には重砲平均一二乃至一六中隊を有することとせり動員直後野戦軍に配属し得る総砲数は野砲及軽榴五五○○門野戦重砲約二○○○門なり

指揮法は戦闘間全砲兵を師団に配属し上級司令部は干渉することなく軍及軍団に砲兵司令官を有せす訓練は仏軍と大差なきも砲兵将校の位置は騎兵歩兵に比し次等に在り

第三章 一九一四年運動戦に於ける独仏両軍砲兵

一九一四年八月開戦と共に仏軍は火器効力の無理解及重砲数の不足(独軍二、〇○○門 仏軍三〇八門)は独軍重砲兵の遠距離射撃の為屡々行軍縦隊の儘急襲せられ陣地占領後も独軍重砲の跳梁に委し砲兵の攻撃準備を待たすして前進する攻撃精神に満ちたる歩兵は著大なる損害を蒙り到る所撃退せられたりき

仏軍総司令官は其損害を緩和する為先つ防勢に立ち砲兵の攻撃準備完了後疎散なる隊形を以て前進すへき命令を下せり

独軍は重砲支援の下に攻勢に次くに攻勢を以てし仏軍領土内に進入したりしか重砲の追随し得さる時は仏軍野砲の為大損害を蒙りたり斯くて「マルヌ」会戦は独軍の失敗に終りしも「オアス」「エーヌ」両河間の平地に退却するや独軍は重砲兵と合するを得て強威力を発揮せり

然れとも両軍砲兵弾薬の欠乏は十一月十五日以来陣地戦の端緒に入りたるものとす

斯くて一九一四年は火砲威力か敵歩兵を停止せしめ得へきこと、夢想たもせさりし弾薬消費(仏軍の装備弾薬は野砲一門一、三○○発なりしか「マルヌ」戦終期既に欠乏を来し毎門二五○発となり独軍野砲一門八○○発となりしか之亦欠乏せり唯独軍重砲は一門四○○○発なりし為十一月末尚弾薬豊富なり)、重砲兵の必要、十五榴の精神的威力、対砲兵戦の必要(少くも制圧)、観測通信機関の不足及空中観測の必要等に就き教訓せり之か為仏軍に於ける対策は弾薬節用時期に於けるばんじゅ九○密砲中隊の編成、繋駕九五密及一二〇密長加農を以てする軍団重砲兵隊の編成、徒歩砲兵、一五五密長重砲、一九一二年式一五五密短重砲及二二〇密臼砲等の若干中隊の編成、B火薬代用として黒色火薬の利用、電話器材の装備、民間工業動員、弾薬の製造(野砲弾日製一万三千六百発を十万発に増加)に着手せり

本年十二月砲兵指揮機関の必要に迫られ軍砲兵司令部を設けたるも師団砲兵放列指揮の連隊附中佐は要員不足上削除したり

独軍に於ては本年末新編成師団火砲の必要上軽砲兵六門中隊を四門中隊に改編せり

本年度に於ける損害は仏軍銃弾二三%砲弾七五%なるは着目するの要あり

第四章 一九一五年陣地戦に於ける独仏両軍砲兵

一九一五年前半期に於ける仏軍の部分攻勢は其正面の過小及砲兵不足の為失敗せり

例えは五月第十軍の「アルトア」戦に於ては十八粁の正面に重砲三百四十門を以て連続六日間攻撃準備射撃を実行し歩兵は損害なく数粁を前進せしも戦果拡張の正面六粁に過きさりしと重砲兵の運動性小なりし為歩兵は独力を以てしては之を突破する能はす反て独軍兵力増加の為失敗せしか如きは其例にして歩兵の攻撃は砲兵の戦闘参加不充分なるときは失敗に帰するを実証せり

本年の戦闘に於て民間工場製作の弾薬は多数の過早破裂及砲身の膨張又は破裂を生したり(註「アルトア」戦の某砲兵大隊は十二門中十門の砲身破裂を生せり

八月には移動式重砲兵の数を増加し開戦時六十七中隊なりしもの既に二百七十二中隊となれり其他通信器材も豊富となり無線電信も配属せられ飛行機との協力も進歩し試射に遺憾なきに至れり

九月二十二日より十月一日に至る第二、第四軍の正面三十五粁に亙る秋季「シャンパーニュ」戦に於ては「アルトア」戦の経験に依り左の如く砲兵数を増加せり

砲兵使用計画も複雑化し鉄条網及側防機関の破壊計画、対砲兵戦、攻撃前の破壊及突撃間の制圧計画歩兵随伴及掩護計画等を網羅せり

攻撃準備射撃は三日間に亙り豊富且無制限に近き射撃を実施し(六日間に 七五密砲百三十八万七千三百七十発 九五密乃至一五五密砲二十六万五千四百八十三発 二二〇密乃至二七〇密砲三万三百十七発)之か為独軍砲兵は全然圧倒せられ歩兵は九月二十五日午前九時十五分降雨と泥濘とを冐しつつ正面十四粁を奪取せしも反対斜面に在りて準備射撃を受けさりし独軍の第二陣地に衝突し且独軍予備隊に依り不成功に終われり

十四年より本年冬季に亙り新編制軍団に配属する師団砲兵は各師団野砲一大隊にして之を軍団砲兵(野砲)より抽出編合せし為軍団砲兵は三中隊編成大隊の二大隊に減少せり

又十五年の陣地戦は遮蔽目標及夜間射撃の必要を生し且友軍に危害を興へさる為射撃精度を要求し仏軍参謀本部は八万分の一地図又は五万分の一伸写図は射撃用地図として充分ならす正確なる大梯尺図を必要とするに至り同時に射表利用の必然的要求は気象の影響を研究し全射表を再審議すへきを陸相に請求するに至れり

更に重砲隊数に関しては更に牽引自動車砲兵百中隊繋駕重砲兵四百中隊の完成計画を立案し従来独立大隊として某軍に一時的に配属し軍は所要に応し軍団に配属せしものを十月一日より連隊編成とし次の如く改編せり

  1. 自動車重砲兵二十連隊、各連隊は二十中隊より成り三砲兵群とす
    第一砲兵群
    五中隊にして一〇五密砲三中隊一二〇密砲二中隊
    第二砲兵群
    同右(↑)
    軍団重砲兵
    第三砲兵群
    十中隊より成り二中隊編成の一五五密長重砲二大隊及三中隊編成の一五五密短重砲二大隊
    軍砲兵或は総軍司令官の直轄砲兵
  2. 自動車牽引重砲兵五連隊、各連隊は加農十二中隊短加農又は臼砲十二中隊
    −総軍司令官又は軍集団司令官の移動予備とす

本編成は一時的のものにして一五年十月一日には第八十一乃至第九十の十連隊を編成するに決し連隊は二中隊編制の長重砲六大隊短重砲六大隊より成り一八年四月漸く完了せるものとす

斯くて一五年の経験は十一月二十日附重砲兵用法に関する教令及一九一六年一月十六日附総攻撃の目的及指導に関する教令となり就中注目すべきは対砲兵戦の原則にして対砲兵戦は軍団に依り指導するを本則とし各軍団には砲兵情報部(S.R.A)を編成し音源評定班(S.R.S)地上観測による情報班(S.R.O.T)を有す然れとも其数多からさる為軍に属して使用せり

気象に関しては軍気象班より情報を受くるものとす

攻撃準備射撃は砲兵の能力に応し毎次の深さを決定し砲兵の密度を大にして時間を節約し歩砲連絡の為歩砲指揮官の位置を近接せしめ且砲兵より支援すへき歩兵に連絡班を分遣す

教育訓練に関しては砲兵教育の完成及統一の為「シャロン」「アミアン」「ツール」に重砲研究所を設け砲兵上長官、士官を逐次投入せしめ各軍に於ても野戦砲兵射撃研究所を設け現役青年将校及中隊長たるへき予備将校を教育し補充に充つ

又本年八月五日軍団重砲兵指揮官を設け戦術並行政的長官とす

一五年十二月二十五日以来の独軍の「ヴェルダン」の攻撃は二一〇臼砲(百中隊)、三〇五密榴弾砲(十中隊)、三十八珊及四十二珊の巨砲を集め射撃精度を第二位に置き簡単なる試射に止め狭小夾叉地帯に集中火を投入し砲兵射撃に一新紀元を開き仏軍を唖然たらしめたり

第五章 一九一六年陣地戦に於ける獨佛両軍砲兵

仏軍に於ける砲兵増加の計画は着々実施せられ一九一六年春に於ては左の砲数を有せり

独軍は本年現役予備師団共同一編制と為し四門編成中隊三個より成る大隊三個を以て一連隊とし之を師団砲兵とせり

同時に独立連隊を以て砲兵総予備として編成に着手せり

独軍は協商軍の攻勢に先ち二月二十一日より七月一日に亙り「ヴェルダン」要塞の攻撃を実施せり

独軍は多数の四十二珊及三十八珊重砲を含み其数千門を越え二月二十一日午前七時射撃を開始し連続九時間に塹壕交通壕を完全に破壊し第一線と後方とを遮断し午後四時突撃を開始したり然れとも仏軍歩兵の固守と仏軍野砲の直接照準を以てする射撃とに依り攻撃進捗せす

然れとも独軍は毎日連続攻撃準備射撃を実施し仏軍を殲滅しつつ前進し二十二日終に「ドーモン」堡塁を急襲占領せり二十六日以来は仏軍増援隊来着の為成功せす

独軍は三月仏軍の両翼に向ひ攻勢を執り殊に仏軍砲兵に対しては各種火砲の集団的威力を発揮し致命的打撃を興へたり仏軍砲兵は射程小なる為同一目的を以て射撃せしも奏効せす五月に入るや仏軍歩砲兵の生気回復と仏軍重砲増加との為独軍の奏効愈々困難となり六月二十二、三日には戦闘の決に焦慮せる独軍の猛烈なる砲撃に伴ひ歩兵は「スーヴィル」堡塁に向ひ攻撃して其外岸に達し仏軍は将に危機到らんとせしも「ソンム」の大攻勢開始と共に独軍は攻勢を中止するに至れり本戦闘に於ける独軍の成功は準備の秘匿急襲攻撃準備射撃時間を短縮前代未聞の猛烈なる集中火に依る仏軍砲兵に対する対砲兵戦の効果に依るものなり

又砲兵の威力は其使用砲数弾薬数の相乗積に依ることは両軍共に之を認識せり

本戦闘に於て独仏両軍共に弾幕射撃を実施し歩兵の前進を阻止し或は殲滅せしも一中隊の担任正面は百米を適度とし一中隊を以て八百乃至千二百米を火制するか如き戦前の思想は其姿を没したり殊に前進する敵を阻止する案より攻撃前進を起さしめさる案(対攻撃準備射撃)の合理的なることも証明せられたり

尚敵の増援部隊に対しては集中砲火を以て必す敵の通過すへき地点を遮断するを良法とす

集中射撃は数分間に雨注する射撃法にして之に浴せる敵は絶体絶命的なるも地域に対する分散的射撃は慣性となり精神的威力を及ほさす

要約するに射程、口径、射撃速度、使用砲数及弾薬数は多且大なるを必要とす

攻防両者の砲兵指揮法に就ては攻者は其過失を攻撃の利と砲火とに依り償ふを得るも防者は総てに不利にして砲兵は迅速的確なる火力機動、瞬間的威力を現すに非れは致命的失敗を伴ふものとす

殊に仏軍の如く防御に於ける砲兵の瀰縫的用法を以てすれは砲兵指揮官は嘗て使用せしことなき多数砲兵指揮及指揮系統の耐えさる変更及破壊並不準備の戦闘加入の結果混乱に陥るを示せり

本戦闘の失敗に基き仏軍は歩兵の攻撃を準備する為速射且運動性ある短重砲兵、遠距離並穹窖内砲兵に対する大射程重砲兵、ぺとん掩蓋及支支点破壊の為の超威力短重砲兵を要求し繋駕重砲兵二十連隊(各連隊は軍団重砲兵[一〇五密砲二大隊 一五五密重砲二大隊]二個又は軍重砲兵[一五五密長重砲二大隊 一五五密短重砲二大隊]一個より成り大隊は三中隊より成る)牽引自動車重砲兵十連隊(各連隊は一長重砲兵群[一五五密砲又は一四五密長重砲六大隊]及一短重砲兵群[二二〇密砲四大隊及二八〇密砲二大隊]より成る)の編成計画を立案せり但本計画は大戦終了迄所望の域に達せす若し休戦とならさりせは独軍は大なる危機に遭遇せしならん本編成に依り各歩兵師団には一五五密重砲二大隊各軍は一〇五密砲及一五五密砲各二大隊の長重砲一連隊を配属し得へく自動車牽引重砲は総軍司令官の隷下に予備隊として控置し得へし

然れとも新材料出現迄仏軍は砲架の改造、初速の増加、弾丸形状の改変に依り射程の増加を期したるも十五加に於て独軍の一五、六〇〇米に対し仏軍は一三、五〇〇米十五榴に於て独軍は八、三〇〇米に比し七、八○○米の弱勢力を示せり

又仏軍は六月八日エール将軍監督の下に研究員は教官たると共に学生たるへき砲兵研究所を「ヴィトリ・ル・フランソア」に開校せり

一九一六年七月乃至十一月仏軍攻勢の「ソンム」戦攻撃(正面十五粁)は砲兵の密度を大にし第六軍正面に於て野砲三十四米に一門、重砲二十八米に一門、大威力重砲一二○米に一門とし攻撃準備射撃に七日を費せり本攻撃も予定目標に達したるも独軍の招致せる予備隊の為失敗に終れり

一六年の総教訓は空中写真の発達に依る捜索、移動弾幕射撃の出現、大射程加濃に依る後方地帯の遮断、砲兵密度の増大一九一五年毎粁砲数五○〜五五門、一九一六年毎粁砲数約七〇門、弾薬消費数の増加七月一日のみにて約八千屯二十七列車分之なり

而して仏軍に於て依然として進歩せさるのは試射及空中観測に依る点検射を実施せされは正確なる射撃を実行し得さること対砲兵戦及遠距離目標の射撃には飛行機を要する為攻撃準備射撃時日の長きこと之なり

尚多数の大威力重砲兵(鉄道砲兵)を創設し各一部を北方、中央、東方の三軍集団に分属し一部を総予備となせり

本夏師団砲兵司令部に上長官一を補佐官として附属す

十二月九日始めて軍、軍団、師団砲兵司令官の分担任務を定め師団砲兵司令官と七五密砲兵連隊長とを分離し各軍司令官には任務を盡すに必要なる多数幕僚を配属したるは一大進歩なるも軍集団砲兵司令官を設けす軍団重砲兵指揮官をして依然連隊の指揮を取らしめ且幕僚を附せさりしは未た完全ならす

独軍に於ては一六年末軍団固有の重砲兵を廃し之を砲兵総予備と為せり

一九一六年十一月一日独軍の東方戦場(露軍の占領たる「ウィトニック」橋頭堡攻略)に於ける特異の砲兵用法を概説すれは次の如し本戦闘は独軍砲兵か始めて瓦斯弾を使用せし戦闘なり即準備の秘匿、試射の慎重(数日に亙り緩徐なる射撃を行ひ攻撃開始日当日偏差を修正す)、瓦斯弾に依る短時間の攻撃準備射撃、成るへく多くの瓦斯弾を以てする敵砲兵の制圧、某一線に対する射撃間短時間不意に他線に火力を指向する火力機動、歩兵の喊声と同時に敵の後方地区に火力を転し五分間の急襲射撃を以て敵を欺瞞し新鋭の機関銃及阻止射撃を誘致し若干の機関銃は之を沈黙せしめ、最後の熾烈なる集中砲火の後全線同時に喊声を発せさる突撃実施、綿密なる射撃計画、特に各期に使用すへき弾薬並射撃時間の配当等火力機動の自由保持に就ては学ふへきものあり

又本戦闘にては
対歩兵砲兵群
突撃準備のA群(α、β、γ三小群とす)
野砲二中隊、十加一中隊、軽榴四中隊、重榴七中隊、臼砲三中隊、計十七中隊
陣地側防機能の制圧並遮断射撃に任するC、D、Eの三群
野砲十中隊、軽榴六中隊、計十六中隊
対砲兵砲兵群たるB群
十加一中隊、軽榴一中隊、重榴三中隊、其他一中隊、計六中隊
の三砲兵群に区分せる迫撃砲四十九中隊を使用せり

又砲兵戦闘の指導は専門将校(アウグスタイン少佐)に任せしめたる為時々砲兵指揮官と軋轢を惹起せり

該将校は攻撃砲兵指揮官として攻撃準備及攻撃間に於ては師団砲兵指揮官に対し指導権を有するものとす

第六章 一九一七年陣地戦に於ける獨佛両軍砲兵

仏軍に於て牽引自動車重砲兵の編成逐次完了するに従ひ之を各個に大本営に直属するは使用上不便を感せしを以て大威力重砲兵と共に之を統一して一月十日重砲兵総予備とし二月十四日左の如く三師団に区分せり

  1. 第一師団
    旧大威力重砲兵
  2. 第二師団
    既設及創設中の牽引自動車重砲兵十連隊
  3. 第三師団
    海軍砲使用砲兵(艦上地上を問はす

師団長は将官又は大佐にして三師団の統率は「ビュアー」将軍を以て之に充て軍団長と同一待遇とし教育、人事、補給、用法の意見具申及控置せる重砲総予備の指揮を任務とせり隷下各部隊の使用法は之を軍司令官に分属し逐次各軍団又は師団に分属することあり

本編成は精神的結合及機動の研究準備にして其戦闘実行は分属せられたる指揮官の隷下に在りて行ふものとす

連合軍は此年独軍に対し根本的攻勢を行はんと欲せしも独軍は兵力節約上二月二十六日より退却を開始し三月十七日連合軍射撃開始予定の前日迄に所謂「ヒンデンブルグ」線に後退を完了せり

然れとも仏軍は尚独軍主力を殲滅せんとし四月十六日午前六時より第五第六軍を以て「エーヌ」正面に於て攻撃を開始せり

「エーヌ」正面四十粁に於ける火砲は従来の何れの戦闘より密度大にして其数左の如し

独軍は仏軍の攻撃命令を入手し仏軍の攻撃開始と同時に猛烈なる射撃を開始したる為中央方面に於ては全然失敗に帰し五月四、五両日猛烈なる砲撃後の大攻撃に於て若干進出し得たるも戦闘は交綏の状に陥りたり

本戦闘に依り観察するに数線陣地突破の為には更に大砲兵大射程を要す秘密の保持は更に必要なり又重砲兵総予備の使用を下級部隊に委し長射程砲を師団に配属するは七五密砲、一五五密砲にて達成し得へき近距離の破壊、遮断等に之を誤用するの非に陥るを認識せり

斯くて仏国は四月攻勢の失敗に原因し国家存亡の危機に瀬しは世人の知る所の如し

於是乎米国の参戦迄十八ヶ月を待つへき持久戦の為限定目標の攻撃を実施する他途なきに至り之に依りて人命を愛惜し軍隊の自信力を培養し志気を鼓舞せんとするの策を執れり

砲兵に於ては砲兵総監を設け砲兵中央委員会を創設し参謀総長の隷下に置き射法、火砲及弾薬の学理的用法及内地の教育を研究せり

七月三十一日「フランドル」に於ける限定目標の攻撃は仏第一軍の攻撃正面四粁に七五密砲二四○門、重砲三七三門を配当し正面六米五十に一門(一粁に一五三門)の比を以て二週間に亙る攻撃準備砲撃を実施し敵陣地は全然覆滅し予定目標を占領するを得たり

八月二十一日乃至二十六日の「ヴェルダン」に於ける仏軍の攻撃に於ては七日間の攻撃準備射撃を為し十七粁の正面に対し七五密砲九四八門、重砲一、三一八門、大威力砲六六門、塹壕砲二四七門にして塹壕砲を除き七米正面に一門の比となり斯くて一九一六年二月二十一日独軍第一回攻撃前の仏軍陣地を回復せり

使用砲弾数七五密弾三百万発、重砲弾百万発にして三十車輌の列車三六○列車を要し毎米平均約六屯(一六年の「ヴェルダン」、「ソンム」両戦は毎米一屯)を費やせり

十月二十三日「マルメーゾン」の戦に於ては攻撃準備射撃を六昼夜実施し約十粁正面に七五密砲六二四門、重砲九八六門、塹壕砲二七〇門を用ひ塹壕砲を除き正面六米二〇に対し一門の比なり斯くて第一線は所定の目標(深さ六粁)に達せり

限定目標の攻撃は全然砲兵の戦闘にして砲兵の人員は歩兵の人員より多く斯くて志気沮喪せる歩兵兵卒の信用を辛ふして回復するを得たり此種攻撃は砲数砲弾の数学的戦法にして戦闘計画の如きは楽譜の作曲に同しく斯かる攻撃を反復せは終には独逸の国境に達するを得へきも誠に贅沢高価の本戦法を続行せはやがて軈て内地の製造力、戦争資源及戦費は枯渇すへく而も長時日を要すへし

「ヴェルダン」攻撃砲弾価格七億法、「マルメーゾン」五億法

仏軍攻撃準備射撃の長時日を要することに就ては茲に一言するの要あり

之れ砲兵に対し更に多数を更に完全にと破壊を要求し仏人の性質上精密と計画とを望みしか為にして当時の破壊射撃か観測と修正とを要し多数弾丸の発射を必要とせしに依るものなり而も多数の砲兵中隊に対して地上観測所の数不足し大部分は空中観測に依らさるへからす空中観測は莫大なる砲兵隊に対しては機数の不足、優秀なる観測者の欠乏、無電波長数の制限、敵戦闘機の活動等の為意に任せさる事多きを考察せさるへからす

独軍砲兵は転移的射撃に依り地域射撃を実施し射撃地域及所要弾数は試射の精否に依り決定するを以て準備砲撃時間は短小にして足れり

一九一七年末に至るや仏軍砲兵は測地的弾道的気象的準備を研究し実用に供するに足る計算射撃を創始せり十月「マルメーゾン」に於ては未完成の儘本法を実施し其基本諸元に依り若干数の急斉射を行ひ飛行機観測に依り経済的空中観測を実施せり斯くて昼間諸元に気象的修正を施して夜間射撃にも利用し破壊射撃及交通遮断射撃に成功せり戦術上急襲の必要なることに想到するときは本法は効力射準備射撃及攻撃準備射撃の時間を短縮するものにして砲兵射撃上の一大革命なりとす

一七年九月に於ける露軍に対する独軍の「ヂュナ」河渡河の成功は更に革命的なるとす即ち毒瓦斯弾を使用し露軍を毒化し之か為準備射撃は僅々三時間に足り攻撃直前迄百粁の遠方にありしものか輸送又は行軍後四千五百米の「リガ」正面に対して火砲六二八門、塹壕砲五五〇門を展開して数日間に五十粁の深さを突破したれはなり

一七年十一月に於ける英軍の「カンブレー」突破は更に創始的なり即ち第一線の攻撃前進迄砲火を開始せす戦車三六〇輌を以て鉄条網に通路を開設したれはなり斯くて数時間後に八粁の深さを突破したり固より十五粁の正面に火砲千門を展開したるものとす

毒瓦斯弾の現出は仏軍に於ても左の如き月製額数量を示せり

  1. 七月
    七五密瓦斯弾
    三十万発
    重砲瓦斯弾
    六万発
  2. 十月
    七五密瓦斯弾
    十六万発
    重砲瓦斯弾
    二十五万発

一八年十月には野砲瓦斯弾七十二万発、重砲瓦斯弾二十三万発

十二月二十一日仏軍は固有重砲兵を左の如く改編せり

  1. 第一砲兵群
    軍団重砲兵連隊
    一〇五密砲二大隊、一五五密長重砲一大隊後二大隊より成る
    軍団の番号に百を加へたる軍隊號を有す
  2. 第二砲兵群
    同右
    軍団の番号に百を加へたる軍隊號を有す
  3. 第三砲兵群
    一五五密長重砲二大隊、一五五密短重砲四大隊より成る
    三百位の団隊號を有す

軍団重砲兵は新編成師団に配属せらるる必要上三中隊の二大隊を有するに過きさるに至りたり

野砲兵の需要は攻撃師団の密度大なる移動弾幕射撃の実行上、又は被攻撃正面の迅速なる増援、防勢地区の広正面師団への増加及交代休憩の為不断に増加せり然れとも馬匹資源の減少は器械力牽引の必要を生し軍団砲兵は先つ之に改編せらるるに至れり

一九一七年末期独軍は先つ「リガ」戦に参加すへき師団に次て一九一八年の西方戦場の攻勢に参加すへき師団に一〇糎加農四門の一中隊及十五糎榴弾砲四門編成の二中隊より成る建制一大隊を配属せり又攻撃軍団には二十一糎臼砲三門編成の中隊二個及一九一六年式十五糎加農二門編成の一中隊より成る臨時編成の一大隊を配属せしか後二大隊に増加せり

一九一七年九月一日「リガ」付近の会戦に於て独軍は約十粁の攻撃正面(歩兵師団三師団)に砲兵約百七十中隊を使用せり此の中隊数は露軍の二線陣地帯(其距離二〜三粁)を同時に火制し得へき必要の最小限度なりとせり

而して「ヂュナ」河の渡河は最前線に於ける露軍の防御組織を完全に制圧したる後成功すへきか故に砲兵数の充分ならさる状況に鑑み多数の軽迫撃砲の外中迫撃砲約百三十門重迫撃砲約百門を増加せり

本攻撃に於ける砲兵兵力は野砲五十八中隊重加十五中隊軽榴三十三中隊重榴三十六中隊臼砲十中隊にして其軍隊区分左の如し

  1. A砲兵群
    (対砲兵戦)
    四小群
    • 野砲
      二十五中隊
    • 重加(十加)
      七中隊
    • 重榴
      三中隊
  2. B砲兵群
    (対歩兵)
    二小群
    • 野砲
      十三中隊
    • 重加
      二中隊
    • 軽榴
      十一中隊
    • 重榴
      九中隊
    • 臼砲
      三中隊
  3. C砲兵群
    (対歩兵)
    二小群
    • 軽砲
      八中隊
    • 重加
      四中隊
    • 軽榴
      十中隊
    • 重榴
      十三中隊
    • 臼砲
      五中隊
  4. D砲兵群
    (対歩兵)
    三小群
    • 野砲
      十二中隊
    • 重加
      二中隊
    • 軽榴
      十二中隊
    • 重榴
      十中隊
    • 臼砲
      二中隊
  5. 予備第一師団砲兵(二小群)
    成し得る限り対砲兵戦に協力す

対砲兵群は三小群に分つ場合に於ては一小群は某師団第一陣地帯に対する突撃準備一小群は某師団第二陣地帯に対する突撃準備他の一小群は遠方方位に於ける阻止に用ひ阻止の為には野砲及重加のみを使用するものとす

迫撃砲は各師団方面の突撃準備に任す

使用弾種は対砲兵戦に於て瓦斯弾の使用率大にして例えはA砲兵小群の野砲一中隊に対し瓦斯弾三、〇〇〇発、榴弾八〇〇発の如き一例なり

瓦斯射撃は午前四時、敵歩兵陣地に対する効力射は午前六時、突撃は午前九時十分に開始せり

地形概ね平坦なる為主観測は展望台より補助観測は「ヂュナ」河々岸より実施す

露軍の観測所を撲滅する為には「オーゲル・ガルレ」村落の家屋に対し焼夷弾を以て火災を起こさしめ終に此の日独軍は戦勝を得たり

本戦闘に於ける独軍砲兵用法上特に注目すへきは秘密の保持にして指導専門将校の赴任経路も「ガリチヤ」より殊更伯林を経由せしめ着任後も存在を軍内に知らしめす試射は測地せる側方の地点に対して行ひ当日偏差の決定は射撃開始後各種口径の一中隊を以て距離比を求め歩兵陣地に対する試射は若干発に止めて射撃地域を増大し弾幕の移動は状況の変化を顧慮し時刻に依らすして煙火信号のみに依り補助観測者及連絡班は第一回渡河と同時に渡河し尚鹵獲砲使用の兵員を戦場に招致せること等なり

第七章 一九一八年運動戦に於ける獨佛両軍砲兵

一九一八年一月二十六日仏軍に於ては重砲兵総予備団を砲兵総予備団に改編せり而して大本営直轄たりし繋駕重砲兵諸連隊へ第二師団に同しく徒歩砲兵諸連隊及塹壕砲兵諸隊を加へ新たに第四師団を編成せり是れ重砲兵総予備に対する地区司令官の意の如くならすとの反感及大本営直轄部隊の形而上下の悲哀を緩和せり又総軍司令官の直轄隷下に砲兵総監部を編成し砲兵技術の指揮監督砲兵総予備団の直接指導に任せしめ軍団長と同一待遇の中将を長とし一参謀部及二人の補佐将官を配属せり

仏軍一月二十四日の教令は防御は深長地区に於て行ひ全力を尽して抵抗すへき地帯は第二陣地帯とし独軍か砲兵組織を変更するに非されは接近し得さる如くし砲兵を縦長に梯置し数段の抵抗に便にし且弾薬補充に容易ならしめ尚一部を繋駕予備隊とし第二陣地帯被突破の際の防御及逆襲用に充てたり

又仏軍最高統帥は非攻撃正面の軍集団には師団及軍団の固有砲兵及陣地砲の(?)を残し其他の全重砲を抽出転用すへき必要を警告し自動車積載砲たる軍団七五密砲連隊は戦略予備として四十八時間以内に出撃すへき準備に在らしむ之か為迅速なる移動の為の交通規制及専用道路を設けたり

英軍を殲滅せんとする三月二十一日乃至四月九日の独軍第一次攻勢は攻撃準備の秘匿事前の試射の全廃瓦斯弾を以てする攻撃準備射撃及攻撃直接支援を以てし五時間砲撃の後二十一日午前九時十分英軍陣地に突入し爾後千門以上の火砲を獲得し深さ六十粁の突破に成功せり

第二次攻勢は四月九日乃至五月二十二日に亙り正面二十粁に亙り「フランドル」地方に試み四月十八日より二十二日には独軍は重砲兵及弾薬を推進し「ケンメル」高地を攻撃せしも連合軍予備隊の招致に依り攻撃を中止せり

五月二十七日より六月五日に亙る第三次攻勢は「ランス」、「オアーズ」地方六十粁に亙る正面に実施し二十六日夜一時仏軍の第一線より砲兵陣地に亙る十乃至十二粁間の地区に瓦斯弾射撃を実施し全地域を撒毒し使用砲数五千門約千四百五十中隊にして仏軍の防御正面毎粁に三十中隊以上を展開したり砲撃準備射撃は二時間余に過きす斯くて二十九日「まるぬ」河畔に到着し仏軍に肌粟の感あらしめたるも仏軍予備隊の増加に依り停止せり

六月九日より十二日に亙る第四次攻勢に於ては仏軍砲兵の六月六日終夜以後の対攻撃準備射撃の為華々しき奏効を見す十二粁の正面を突破せしのみ、特に十一日午前十一時頃仏軍四師団戦車十二大隊自動車積載砲兵二連隊の逆襲に依り独軍は退却するに至れり

七月十五日より十八日に亙る「シャンパーニュ」地方に於ける第五次攻勢に於ては仏軍は六日以来毎夜対攻撃準備射撃を実施し独軍砲兵を以てする攻撃準備は十四日夜零時十分より開始するを知り仏軍は同夜午後十一時乃至十一時四十分対砲兵戦及独軍歩兵の集合せる第一線に向ひ破壊射撃を実施し独軍は同夜四時四十五分突撃を開始せるも仏軍砲兵の使用計画に基く整正なる射撃の為失敗に帰したり独逸軍の戦法は夜間行軍に依る近接、払暁後移動弾幕射撃の掩護の下に於ける攻撃直前至近の距離(陣地前二、三百米)への配備、攻撃準備射撃時間の短縮に依る急襲、各種口径各種弾丸を以てする縦深十粁に亙る同時猛射、随伴砲兵の掩護に依る動作の迅速、機動に依る突破口の側面拡張並深き突破等にして之に伴ふ砲兵用法は概ね左の如し

  1. 濃密なる砲兵の展開並攻撃準備
    一九一七年八月三十一日「リガ」戦の一例
    四粁五十の突破正面(砲兵一五七中隊塹壕砲五五〇門(毎粁三十五中隊)一師団正面の重砲平均二十二中隊)
    一九一八年三月二十一日「ピカルデー」戦
    二十粁の正面(毎粁砲兵二十一中隊内重砲十一中隊
    一九一八年五月二十七日「エーヌ」戦
    主攻撃正面(四十五粁の正面に用ひし砲兵数一四五○中隊毎粁三十二中隊
    一九一八年七月十五日「シャンパーニュ」戦
    毎粁平均二十五中隊内重砲一五〜一六中隊
  2. 展開要領
    集中の為夜行軍を用ひ昼間は宿営地に隠蔽し陣地に就く砲兵は総を音響を発せさる如くす
  3. 指揮系統

    • 破壊及歩兵支援砲兵群(第一線師団毎に)
      • 砲兵小群(第一線歩兵連隊数に応す
        • IKa1
          第一陣地帯の破壊
        • IKa2
          他の陣地帯の破壊
      • 砲兵小群
      • ・・・・
    • 対砲兵砲兵群(軍団毎に)
      AKa
      敵砲兵の制圧
    • 遠戦砲兵群
      FeKa
      住民地、野営地、司令部、無線電信所、通路、気球等の射撃
    • 大射程砲兵群(軍に一個)
      FeKa
      遠大距離の射撃
    • 「リガ」戦以後全砲兵は 攻撃準備間及攻撃実施の当初軍司令官の直接隷下に入れ軍砲兵司令官の編制なきを以て大本営の砲兵機関を一時派遣して其指揮に任せしめたり
    • 一九一八年五月二十七日独第七軍の「シュマンデーム」の突破は二十六粁の正面に亙り砲兵兵力は五軍団に対し約千百中隊にして希望数に達し砲兵業務区署の為には軍に砲兵部将官を配属し軍は各部隊に対し該将官の意見及指示を軍の部署として絶対に尊守すへきを命せろ軍隊区分に就て軍は各軍団の対砲兵、対歩兵、遠戦の砲兵群を区分し更に小砲兵群の砲種中隊数を規定せり

      全砲兵群の射撃は午前二時瓦斯弾を以て之を開始し移動弾幕射撃亦良好にして独軍自ら称する如く最も輝ける戦勝を獲得せり

      本戦闘に於ける砲兵用法の特長は強大なる砲兵を著しく前方に配置し一部は密に集団し数百中隊は最前線の殆と直後に陣地を占領し遠く仏軍の陣地に対し移動弾幕の援護を興へ、重平射砲も亦遠隔せる卸下停車場司令部等を射撃する為前方に推進し試射は全然行はす効力射開始と同時に歩兵陣地に対し射撃の点検を行ひたる三月攻勢の射撃法をも朝霧為断然断念したり

      効力射は仏軍の全陣地組織に衝撃的に一般的急襲射(十分間)を行ひたる後威力を増加せる対砲兵戦(仏軍砲兵一中隊に対し独軍砲兵三中隊を以て六十五分間実施す)を行ひ次て歩兵陣地及砲兵陣地に対し計画的射撃を行ふ

      之等の射撃は全然夜間に実施し歩兵は黎明を期し突撃す従て従来砲兵に対しては夜間歩兵陣地に対しては払暁後実施せる攻撃の形式を放擲せしか為独軍の突撃部隊は直前の地形を望見し得るも敵の機関銃巣及阻止砲兵の観測所等より認識せらるるの不利を免れ又戦果拡張に一日を使用するの利を得たり

      第四次攻勢以後に於ける独軍の指揮組織は殆ど仏軍と同様にして大射程砲兵群(軍司令官直属)対砲兵砲兵群及遠戦砲兵群(軍団長直属)破壊及歩兵支援砲兵群(師団長直属)の三種に区分せられあるも攻撃準備終了後は左の区分となせり

      • 軍予備
        状況に応し使用す
      • 師団砲兵
        • 野砲一連隊
          内七七密砲一大隊を随伴砲兵とす
          十五榴二個中隊
          十加一中隊
          大隊として各歩兵連隊に一中隊の比に分割す
      • 軍団砲兵
        二一糎臼砲全部
        一三糎加農全部
        一五糎加農全部
        野砲及重榴弾砲の一部
      • 若干師団には山砲、歩兵砲、海軍砲、軽迫撃砲を有す
  4. 急襲
    増加砲兵の試射を省略し万般の射撃準備を整え其不利は射撃地域の拡大と使用弾薬の増加に依りて之を補ふ
  5. 攻撃準備射撃時間の短縮及其実地
    「リガ」戦五時間、三月二十一日第一次攻勢五時間、五月二十七日第三次攻勢二時間四十分、六月九日第四次攻勢三時間四十五分、七月十五日第五次攻勢四時間にして攻撃準備射撃の目的を制圧に止め歩砲兵制圧の為には瓦斯弾を用ふ
    1. 第一期(一〜二時間)
      全砲兵を以てする対砲兵戦にして仏軍砲兵中隊に少くも三砲兵中隊を集中す
    2. 第二期以後
      対砲兵戦は対砲兵群のみとなり他は固有の任務に復帰す
    3. 終期
      破壊及歩兵支援砲兵群は移動弾幕射撃の出発点(第一線後方三百米)に射撃を固定す
  6. 攻撃前進後の歩砲協同
    某時に於ける移動弾幕線を移動し四又は六分毎に二百米の躍進を為すも歩兵の近接前破壊を要する陣地は二十乃至四十分間停止して之を射撃す
    此実行後一中隊を随伴砲兵として前進せしむ

翻て仏軍防御に於ける戦法を見るに大戦開始以来国土を独軍に委せさるの信念は第一線陣地に骨を埋むるの覚悟を以て第一線陣地帯を主抵抗地帯とせるも独軍の戦法に対しては第一線を固守するの難きを知り一八年より第二陣地帯を主抵抗地帯とすることに改めたるも独軍第三次攻勢迄は軍隊の信念を覆へすを得すして此の施行を命せさりき

独軍第四次攻勢以後は其実行に就き之に伴ふ砲兵用法も左の如く改めたり

  1. 砲兵の固有陣地は抵抗地帯の後方なること
  2. 前哨陣地の前方を遠く射撃し得ること
  3. 敵火力を分散せしめ且連続して任務を遂行する為縦深配備を取ること
  4. 陣地を偽装すること
  5. 日課的射撃は他の陣地より実施し屡々位置を変更すること
  6. 対砲兵戦は常に集中して行ひ単独に為すへからさること

又砲兵総予備団の用法は戦略的に迅速に突破口を閉塞するに在るを以て牽引自動車砲兵を疾速に増加し戦闘の骨幹を成形して敵の前進を完全に阻止する如く使用せり尚之か為自動車積載砲兵に改変せし軍団砲兵連隊を速に展開し繋駕重砲兵連隊の来着する迄第一線師団を支援せしむ

斯くの如き必要上一八年六月十日軍団砲兵の頭號連隊(自動車積載)を砲兵総予備団に編入し第五師団となせり

仏軍は独軍第五次攻勢に依り既に其疲労せる時期に乗し五月以来米軍か毎月二十五万人を上陸せしめ兵力の均衡を得るに至るや連合軍総指揮官「フォッシュ」将軍は決然攻勢に転したり

七月一日に於ける仏軍砲兵の状況左の如し

  1. 一、
    軽砲兵(計四、八二四門)
    師団の乗車砲兵連隊(射程十粁以上)
    一〇五連隊(三、七八〇門)
    騎兵師団の騎砲兵大隊
    六大隊(七二門)
    砲兵総予備団の自動車積載砲兵連隊
    二七連隊(九七二門)
  2. 二、
    重砲兵(計五、七八四門)
    1. A
      繋駕重砲兵
      1. 短重砲兵
        • 各師団の一九一七年式新式一五五密砲大隊(射程一二、〇〇〇米)一〇五大隊(一、二〇六門){新式砲なり、八月十日迄配属せらるる師団十二
        • 砲兵総予備団の一九一二年式一五五密砲大隊(射程一二、〇〇〇米)一五連隊(六〇大隊七二〇門)一九〇四年式又は一九一二年式の旧式砲多し(射程六、〇〇〇米
      2. 長重砲兵
        • 各軍団一連隊
          • 一〇五密砲兵一又は二大隊(四五大隊五四〇門)
          • ばんじゅ一二〇密(射程七、〇〇〇米)砲若干あり
          • 一五五密砲兵(旧式砲七七年式)大隊(三〇大隊三六〇門)
        • 砲兵総予備団
          • 一〇五密砲兵五連隊(一五大隊一八〇門)
          • 一九一七年式一五五密砲兵(射程一六、〇〇〇米)十連隊(三〇大隊三六〇門)
    2. B
      牽引自動車砲兵(砲兵総予備団の第二師団
      1. 短重砲兵連隊(四大隊編制)十連隊
        • 二一〇密速射臼砲(射程一一、〇〇〇米)八一中隊(三二四門)若干部隊は代用として七七年式一五五密長重砲
        • 新式二八〇密砲(射程一一、〇〇〇米)三九中隊(一一七門)
      2. 長重砲兵連隊(四大隊編制)十連隊
        • 一九一六年式一四五(射程一七、八〇〇米)又ははフィルー式一五五密大威力砲(射程一八、八〇〇米)四八〇門
        三分の一は旧式砲なり
    3. C
      徒歩砲兵
      陣地砲一、四二三門
      旧式砲連隊(四中隊編成の大隊三又は四より成る)十三連隊に編成替中
  3. 三、
    塹壕砲兵
    砲兵総予備団に属する四連隊(一六〇中隊)
    五八密二號砲
    四〇中隊
    二四〇密長砲
    四〇中隊
    一五〇密砲
    八〇中隊
  4. 四、
    大威力重砲兵
    海岸砲兵火砲を利用したる鉄道砲兵
    三二七門
    • 砲兵総予備団の第一師団(大威力重砲兵)
      • 二八五密加農(射程二七、〇〇〇米
      • 三〇五密加農(同右
      • 二四〇密砲(射程三七、〇〇〇米
    • 砲兵総予備団の第三師団(海岸砲兵)
  5. 五、
    弾薬(一門に付千発単位数)総軍司令官の貯蔵弾薬
    七五密砲
    一、五六六
    一〇五密砲
    一三二
    一五五密砲
    二、五〇五

以上の如き砲兵の整備を以て材料の頂点と云はれたる七月十八日仏軍は攻撃準備射撃を行ふことなく戦車支援の下に攻撃を開始せり(但第六軍は抵抗陣地に対し一時間三十分実施す)

「シャトー・チェリー」方面に於て第十軍は兵力十八師団戦車三七五、飛行機四〇中隊を以て十八粁の正面を攻撃せり其砲兵数左の如し

第六軍(第十軍の右翼)は兵力九師団戦車一七〇、飛行機二八中隊を以て二十六粁の正面を攻撃す其砲兵数左の如し

斯くて午前四時三十分移動弾幕射撃の掩護の下に歩兵、戦車は前進を開始し十九日夕には独軍の第一陣地帯正面五十粁深さ十粁を占領せり

八月八日午前四時二十分仏第一軍及英第四軍は「ピカルデー」方面に於て攻撃を開始したり仏第一軍の兵力は十五師団にして同正面は三十五粁なり砲兵力左の如し

第一軍左翼軍団(第三十一軍団)は四十五分第九軍団四時間の攻撃準備射撃を実施し十日後終に独軍は平均十五粁後方へ退却せり

八月十八日第十軍は更に十五粁の正面に対し左の砲兵密度を以て攻撃を開始し九月三日連合軍は「ヒンデンブルグ」線に接触するに至れり

九月二十六日仏第四軍及米第一軍か「ランス」「アルゴンヌ」間二十五粁の正面に実施せし総攻撃は七五密砲一、三三二門重砲一、一四六門大威力砲八〇門にして一門の担任正面は前項に同じ

次て九月二十九日連合軍は全線十二軍を以てする攻勢に移り「ヒンデンブルグ」線を超え前進し十一月十日「セダン」、「メヂエール」、「モン」、「ガン」の線に進出し翌十日さしもの世界大戦も休戦となれり

第八章 世界大戦の砲兵的結論

  1. 一、

    如何なる戦闘に於ても機関銃の防御能力は歩兵に対し殲滅的なり而して戦闘は之を撲滅すへき砲兵の支援なけれは成功せす此の砲兵支援能力は砲数と射程と射撃速度と弾薬と陣地変換との能力とに関す

  2. 二、

    鈍重に陥り易き砲兵指揮を軍の機動に応し適時有効ならしむる為の指揮機関を有し以て部隊直接指揮と戦術技術の指導監督とを敏捷ならしむるを要す

    仏軍一八年に於ける砲兵指揮機関の状態左の如し

    • 師団
      • 師団砲兵連隊指揮官
        大佐(参謀部幕僚将校五)
      • 連隊長
        中佐
      • 師団砲兵廠長
        少佐
    • 軍団
      • 軍団砲兵連隊指揮官
        少将
        • 参謀部幕僚
        • 司令部附将校
          (四)
          • 砲兵情報部
          • 勤務部
      • 連隊長
        大佐
      • 軍団砲兵廠長
        中佐
      • 軍砲兵指揮官
        将官
        • 参謀部
          • 長佐官
          • 参謀尉官
        • 司令部附将校
          (六)
          • 砲兵情報班部
          • 勤務部
            • 材料検査掛
            • 対空掛
      • 砲兵総予備団よりの常置分遣将校
      • 軍大砲兵廠長
        大佐
    • 総軍司令部専属顧問野戦軍及内地の砲兵総監
      中将
      • 砲兵総予備団
      • 砲兵中央委員会
      • 砲兵研究所

    独軍に於ては終始最高統帥より砲兵指導官を各軍に派遣し砲兵に関する計画命令の起案要すれは指揮に任せしむ

  3. 三、

    企図の秘密は徹底的なるを要す射撃開始時刻は最後迄秘密を保つを要す

  4. 四、

    急襲的攻撃の為攻撃準備射撃の時間は努めて短縮するを要す

  5. 五、

    試射は省略し得は省略するを理想とす

  6. 六、

    計算射撃を実施し得るの編制装備を有し教育訓練を徹底せしむるを要す之に依て生する夜間射撃の価値を認識するを要す然れとも直接観測の価値は依然没却すへからす

  7. 七、

    砲兵は集中火力及火力機動に依り敵を圧倒殲滅するを要す至短時間に多数の弾丸を雨注すること必要なり
    所望の時期に所望の効果を収めんには多くの火力を集団し且努めて敵に近く位置するを要す

  8. 八、

    砲兵用法は経済且秩序的ならしむる為一指揮官の下に統一指揮するを要す已むを得さるに非れは下級部隊に分属すへからす

  9. 九、

    歩砲兵は絶えす連絡せさるへからす

  10. 一〇、

    戦略的作戦の自由を保持する為機械化せる砲兵総予備団を必要とす

  11. 一一、

    瓦斯弾の効果は甚大なり
    対砲兵戦は瓦斯弾を主とし対歩兵戦には之を混用するを要す

  12. 一二、

    旧式火砲たると要塞備砲たると海軍砲たるとを問わす砲数の欠乏を補ふ為戦場に展開せらるる事実を無視するへからす

  13. 一三、

    情報機関(砲兵測地隊、地上標定隊、音源標定隊及気象測定機関)を設け砲兵情報の蒐集審査査定を適時適切ならしむるを要す

  14. 一四、

    空中観測の必要及価値を向上せり空中写真の利用は積極的なるへし

之を要するに大戦は砲兵の絶対的価値を認識し砲兵の編制、装備殊に指揮機関の合理的組織を優良ならしむへき結論を提示し亦科学的知識の必要と巧妙精緻周到にして戦機に投合する戦術的運用の卓越とを要求せり

之を皇軍に照らすに尊皇愛国の念に燃ゆる肉弾的伝統の忠誠を一層光輝あらしむると共に歩兵をして銃剣を揮ふの最後的瞬間迄之を支援して肉弾の価値あらしむる如く砲兵を優良に装備し教育し且適正に運用するの必要は敢て列強軍に譲らさるの覚悟あるを要す