1936年発布

赤軍臨時野外教令


第十三章 宿営ならびに宿営間の警戒
  1. 其の一 宿営
    1. 第368
      軍隊は宿営の為、住民地(舎営)、住民地外(露営)、又は混合方法(村落露営)を利用す
      最も良く給養の目的を達し、最も良好なる対空遮蔽を与うるものは、軍隊を住民地に配宿し、若しくは温暖快晴の日、給水容易なる森林地区に露営せしむるに在り
    2. 第369
      軍隊をして最も良く休宿の目的を達せしむる為には、左の如く宿営の部署するを要す
      1. 大休止よりの出発迄に当日の休宿地(宿営又は滞在)を指示す
      2. 適時所定の宿営地に設営者を派遣す
      3. 既に休宿に就きたる軍隊の移動を避く
      4. 配宿に当り、軍隊をして無益に道路上に佇立せしめざることに注意す
      5. 給養に便にして衛生保健の条件を具備する地点に休宿地を選定す
      6. 地上及び空中よりする敵の捜索部隊、各戦闘部隊の奇襲に対し軍隊を掩護す
      7. 速かに行軍又は戦闘部署に就き得る如く部署す
    3. 第370
      軍隊の配宿に当り注意すべき事項左の如し
      1. 敵襲に対する戦闘準備を容易ならしむること
      2. 必要に応じ対戦車資材を以ってする協同及び掩護を準備すること
      3. 抵抗に便なる地線を偵察し、且つ之に対する展開要領を定むこと
      4. 警急集合場、及び之に到る道路を指定すること
      軍隊は配宿に当りては、必ず前哨、捜索、及び直接警戒を部署し、警急部隊を定め、通信連絡の手段を整え、敵襲に対して採るべき処置を決定し、対空対化学及び対戦車防禦を完備するを要す。警戒ならびに戦闘準備に関する処置を講ずることは当該地宿営部隊の先任指揮官(宿営司令官)の任とす
      之が為、先任指揮官(宿営司令官)は兵団の宿営地到着後、所要の命令を下達す
    4. 第371
      休宿中の軍隊は最も厳格に規定、及び対空遮蔽の手段を励行せざるべからず
      厳に軍機の保護(敵の諜者に対し)に努め、地方住民をして部隊番号、到着前の出発地、目的地、及び上官の姓名等を知らしむべからず
    5. 第372
      警急部隊は各宿営部隊毎に、砲兵を配属せる歩兵を以って編成し、敵に近き方側に配せらる。警急部隊の指揮官は指定せられたる防禦地区を偵察し、防禦計画を策定す。警急部隊、若し住民地より出発せば速かに新たなる部隊を任命すべし。警急部隊は宿営司令官の命令に依り配置せらるるものとす
      警急部隊の兵力編組及び戦備の度は、敵と離隔の度、宿営地の大小、宿営部隊の兵力、及び住民の態度に依りて差異あるものとす(概ね宿営部隊の9分の1)
    6. 第373
      宿営地に秩序を維持する為、宿営日直を任命し、所要の社会的施設に歩哨を配置し、街路に巡察を派遣し、飲料水の利用、炊爨場、飲馬場、沐浴場、洗濯場、家畜屠殺場、及び厠の位置等を指定し、火災の際の処置を定め、浴場、洗濯店、製パン所其の他の利用法を規定す
      井水其の他の給水点には歩哨を配置し、之が監視其の他の手段を講ず
    7. 第374
      敵襲に当りては、軍隊は宿営司令官の現地到着後直ちに規定する所に従い、命令又は敵襲信号に依りて警急集合場に集合す。警急集合場の数は最大限歩兵大隊(砲兵大隊)に1個宛とし、努めて住民地の外部に之を設定す
      騎兵、機械化部隊、及び輜重に対しては、敵襲に際し採るべき処置に関し特別の指示を与うるものとす
    8. 第375
      住民地に宿営する場合は宿舎の配当の為、又住民地外に宿営する場合は地区を配当する為、設営者を派遣し其の内1名を設営長とす。設営者の派遣は各歩兵大隊、砲兵大隊、及び其の他の独立部隊より少尉1、各中隊(砲兵騎兵共)より過給幹部(下士官)1の計算に依る
      設営長は、現地に到着せば衛生的ならびに獣医的見地より現地を偵察し、舎営又は露営地区を分画し、司令部、通信所、及び衛生施設の位置を決定せざるべからず。此の間、下級設営者は自己の部隊の為、所要の作業を継続す。設営作業終了せば、設営者は自己の部隊の宿営地到着に先立ち之を途中に出迎え、宿営地に誘導配宿す。設営者の中に軍医、獣医、化学兵、及び工兵(水作業兵)を含ましむること肝要なり
      部隊の名称及び番号を標示せる標札を揚ぐることは之を厳禁す
    9. 第376
      住民地外に宿営する場合に於いては、努めて小部隊毎に分置することに努むるを要す。露営地は之を乾燥せる草地に選定し、嘗て軍隊の露営せる地区を避くるを要す
      河流は左記順序に依り、上流より其の使用区分を決定せるものとす
      1. 飲用水及び炊爨用水掬取場
      2. 飲馬場
      3. 人馬の沐浴場
      4. 洗濯場
      家畜置場及び屠殺場は後方に離隔して之を設け、厠は幕舎の位置より100米以内に之を設くべからず。尚、各部隊の中間に配置することを避くべし
    10. 第377
      同一住民地に在る指揮官と部下部隊との連絡は、伝令、電話、及び信号に依りて維持せられ、対空監視哨及び監視斥候を配置す。凡て各幹部及び兵は其の直属指揮官の位置を、又、各指揮官は其の直接部下の位置を承知しあるを要す