1936年発布

赤軍臨時野外教令


第十三章 宿営ならびに宿営間の警戒
  1. 其の二 前哨
    1. 第378
      前哨の任務左の如し
      1. 軍隊の平静なる宿営を保障し、敵の前方部隊の襲撃を撃退し、小銃、機関銃、及び近距離砲火の急襲に対し軍隊を掩護す
      2. 宿営地に対する敵捜索部隊の進入を阻止し、之を撃退し、或は之を捕獲す
      3. 地上及び空中よりの敵の奇襲、殊に空輸挺身隊及び機械化部隊の襲撃に対して軍隊を掩護し、化学的危険を予知す
      4. 敵の攻撃に当りては、之を阻止して軍隊に戦闘準備の余裕を与え、且つ敵の兵力部署を偵知し、其の主攻方向を査定す
    2. 第379
      狙撃師団の警戒部署左の如し
      1. 敵と二日行程以内の距離に在るとき、地形到る所敵の通過を許す時は、数個の前哨支隊を以って。地形上通過方向数ヶ所に限らるる時は数個の独立小哨を以ってす
      2. 敵との距離更に大にして、而も敵の機械化及び自動車化部隊の奇襲を許さざる場合に於いては数個の独立小哨を以ってす
      3. 如何なる場合に於いても休宿する軍隊は其の全周に小哨及び歩哨を配置して直接警戒す
        他の兵団の配置に依り敵方に対し援護せられある軍隊は単に直接警戒のみを配置す
      狙撃連隊、若し独立して広正面に亙り位置するときは、各個の独立小哨及び直接警戒に依り自衛の処置を講ずるものとす
    3. 第380
      前哨の兵力編組及び其の離隔の度は左記条件に基きて決定せらる
      1. 敵との距離
      2. 兵団の任務
      3. 兵団の兵力、宿営地の大小及び縦長(展開所要時間)
      4. 兵団作戦地域の広狭
      5. 地形及び通視の状態
      6. 我が捜索部隊の行動
      前哨支隊の兵力は1中隊を基幹とする部隊より、砲兵(対戦車砲を含む)、騎兵、及び装甲自動車を属する歩兵大隊まで、独立小哨は歩兵1小隊より、機関銃及び対戦車砲を属する歩兵中隊までとし、小哨は重機関銃を属する歩兵小隊、歩哨は歩兵分隊を以って之に充つ。凡て前哨部隊には化学斥候を属すること肝要なり
    4. 第381
      前哨線(抵抗線の第一線)の離隔の度は、敵の近距離砲火に対して休宿中の軍隊を掩護し、適時敵戦車の奇襲及び瓦斯隊の来襲を予報し、休宿中の軍隊をして戦闘展開又は縦隊の構成を容易ならしめざるべからず
      従って、前哨抵抗線(小哨の線)は軍隊の休宿地より3乃至5粁を離隔しあるを要す
    5. 第382
      前哨は広正面防禦の要領に依り配備せらる。歩兵1大隊を基幹とする前哨支隊の担任正面は5粁以下とし、歩兵1中隊より成る小哨(重機関銃及び火砲を属す)の担任正面は3粁以下とす。前哨は単に正面及び開放翼に対してのみならず、時として背面に対しても亦配置せらるることあり
      前哨支隊及び独立小哨に対しては、警戒地域、敵襲に当り保持すべき線、捜索の前端(限界)、合言葉及び通過暗号を示すものとす
    6. 第383
      兵団、行軍より宿営に移るに当りては、縦隊指揮官は行軍警戒部隊に対し停止すべき線を指示す。前哨は其の掩護の下に配備を完了し、行軍警戒部隊は其の完了を待って自己の部隊に復帰す
    7. 第384
      軍隊、宿営後前進を開始するに当りては、新たに行軍警戒隊を命ぜられたる部隊は展開状態を以って前哨線を通過し、前哨各部隊は爾後其の配備を撤収し縦隊内所定の位置に就く(通常後属)
      退却に当り前哨が新たに行軍警戒に任ずべき部隊(後衛)に依りて交代せらるる時は、新たなる部隊は予め前哨線の後方所定の線に展開して前哨部隊の撤退を収容したる後、指定の時刻退却行動を開始す
    8. 第385
      軍隊休宿間に於ける対戦車、対空、ならびに対化学防禦、及び対空遮蔽の手段は、先任指揮官(宿営地司令官)之を定む。高射機関銃陣地(若し存在するときは高射砲陣地も亦)には常時当直を配置し、対空監視哨は隣接宿営地の対空監視哨との間に連絡手段を講ずるものとす

赤軍野外教令:了