1936年発布

赤軍臨時野外教令


第二章 捜索及び警戒
  1. 其の五 対戦車防禦
    1. 第68
      各級司令部及び各部隊は如何なる場合に在りても、常に対戦車防禦に関する顧慮を怠るべからず
      対戦車防禦は左の如く実施せらる
      1. 対戦監視及び戦車警報組織を構成す
      2. 行軍間に在りては特種対戦車防禦資材及び一連隊並びに師団砲兵を縦隊内適当なる位置に配置し、戦闘若しくは宿営間に在りては十分に熟慮せる対戦車火網を構成す
      3. 自己の戦車を以って逆襲を行う
      4. 戦車の攻撃に対し活動兵力を掩護する為、自然的並びに人工的対戦車障碍物を利用する等特別の処置を講ず
    2. 第69
      対戦車監視及び警報は各部隊対空監視機関、飛行機及び捜索警戒機関の任とす。之等諸機関は敵戦車部隊を発見せば、直ちに戦車警報「戦車」を発す。(第44及び45参照)
    3. 第70
      行軍間戦車警報あるときは、各部隊は左の如く行動す
      1. 歩兵、騎兵及び車輌部隊は直ちに最寄の対戦車地区(森林・溝渠・谷地・住民地等)を占領す。重機関銃及び狙撃兵は歩兵の隠蔽地域の前方に十分遮蔽して陣地を占領し、200米に敵戦車の近接を待って展望孔に対し射撃を開始す。擲弾兵は歩兵の前方に遮蔽して陣地を占領す
      2. 縦隊内全砲兵(大口径又は強力砲兵を除く)は、直ちに敵襲を受くる方側に陣地進入を行ひ戦闘を準備す。各中隊内の砲車は予期せざる方向よりする敵戦車の現出に対し、射向変換を迅速ならしめ、且つ相互援助を容易ならしむる為、梯形配置を採るものとす
    4. 第71
      戦闘間に在りては各部隊は、常に敵戦車の襲撃を撃退し得るの準備に在らざるべからず。之が為、常に対戦車火器の戦闘準備を整え、絶えず対戦車監視を継続するを要す
      砲兵は為し得る限り、之を戦車の近接し難き地区に配置す
      防禦に在りては各部隊は自然的又は人工的対戦車障碍物(森林・石造家屋を有する部落・沼地に依りて囲繞せられたる地区・深き壕・溝渠其の他)を利用し、且つ地形に応ずる技術的作業を併有して機関砲、対戦車砲、連隊砲等を以ってする対戦車火網を構成す
      攻撃時に遭遇戦に在りてはあらゆる手段を尽くして攻撃歩兵(戦車)の直後に対戦車砲を推進すると共に、翼側には強力なる対戦車防禦資材を、又縦深には之が予備を保持すること肝要なり
    5. 第72
      師団捜索大隊(自動車化機械化小部隊)及び師団飛行編隊、先ず以って敵戦車の行動する方向に前進し、之と触接せば戦車の行動困難な地区、又は対戦車砲の最も豊富なる地域に之を誘致することに努む
      狙撃又は騎兵兵団戦車部隊は、攻撃又は突破し来る敵戦車を反撃する為使用せらる。此の際戦車は充分遮蔽し陣地を占領し、暴露して前進し来る敵の戦車に対し速やかに戦車砲を以って奇襲的射撃を加え、続いて之を追撃す
      部隊飛行機は、我が戦車をして最も有利なる方向より敵を襲撃し得しむる如く、正確に之を誘導すべきものとす
    6. 第73
      工兵は敵戦車の近接最も容易なる方向に於ける地雷地帯の構成、其の他技術的障碍物の設置に任ず
    7. 第74
      敵戦車の襲撃を撃退せば、各部隊は「集合」の信号により速やかに縦隊内に於ける自己の位置に復帰し、行進を継続す