1936年発布

赤軍臨時野外教令


第三章 後方勤務
  1. 其の一 後方機関
    1. 第75
      後方機関の主要なる任務は、適時且つ不断に軍の戦闘及び生存上必要なる凡ての要求を充足するに在り
      各部隊後方勤務を組織するは幕僚の任とす。兵団幕僚は指揮官の決心に基き司令部内特別の課(部)、各兵種及び各部の長官と共に後方機関を編成し、軍隊の所要量、前送の順序、前送及び後送路等を決定し、後方守備を部署す
      各種戦闘資材、衣糧及び特殊補給品の補給ならびに軍隊に対する諸種の配慮は、各兵種及び各部長官の責務にして、此れ等長官は之に対し完全に其の責に任ずるものとす(各其の専門に応じ)
    2. 第76
      兵団の後方は、前送及び後送の為の特務部隊、及び特殊機関と兵団後方地域とより成る
      兵団後方管区は正面は第一線、側面は隣接兵団との境界、後方は上級兵団管区との境界に依り限定せらる
      狙撃連隊及び師団後方管区を部隊後方と称す。軍団は固有の後方施設を有せず、軍後方に属する兵站の勤務に依存す
    3. 第77
      後方管区の縦深は、通常連隊は10乃至12粁、師団は自動車輸送に依る場合40乃至50粁、馬匹輜重に依る場合25乃至30粁(連隊管区を含まず)、兵站(補給停車場より師団後方管区の境界まで)は50乃至100粁とす
      機械化ならびに騎兵兵団が一般兵団地区内に行動する場合は、個有の後方管区を有せず、此れ等一般兵団後方管区に依存するものとす
    4. 第78
      師団及ぴ連隊の後方は、当該連隊本部又は師団司令部之を組織し、正規の師団及び連隊後方部隊及び其の他の諸機関を使用す
    5. 第79
      兵站は、補給停車場と戦線との距離、師団輜重が自動車式なる時は60粁以上、馬匹輜重なる時は40粁以上なる場合に於て設定せられ、補給停車場より軍隊への前送及び軍より補給停車場への後送に任ず
      補給停車場と第一線との離隔、右の場合よりも小なるときは、各兵団は自己の輸送機関を以って直接補給停車場に就きて貨物を受領するものとす。必要に際しては師団に軍輜重を配属することあり
      兵站管区内諸道路の内、電信電話連絡、交通規正勤務及び道路守備勤務を有する一条の道路を以って基幹線とす
      兵站司令官は作戦関係事項に関しては当該軍団長に隷属す(前送の方向、定量、期限及び順序の決定等)
    6. 第80
      兵站を設けたる場合に於ける、補給停車場より軍隊への貨物の前送は兵站及び兵団輸送機関を以って之を行う
      補給停車場より戦線までの距離75乃至100粁なるときは、師団積換所まで積換を行うことなし。此の際師団輜重は或いは補給停車場よりの前送に参加し、或いは予備輜重及び師団長の移動予備となる
      後方の距離100粁以上に達するときは、中問積換所(軍団積換所)を設け、兵站輸送機関より師団(又は旅団)諸廠及び輪送機関へ貨物の積換を行う。此の場合に於いても、特定の兵站輸送縦列は積換を行うことなく師団積換所に到ることを得るものとす
    7. 第81
      軍輪送機関より師団輪送機関への貨物交付地点を軍団積換所、連隊輜重への交付地点を師団積換所と称す
      各積換所に定量上の予備を集積するは、特別の状況に於いて高級指揮官の指示ある場合に限るものとす
      積換所の開設は当該司令部(軍団又は師旅団)の区処に依る
    8. 第82
      道路の選定、之が改修保全、交通規正、守備ならびに警戒、通信連絡ならびに秩序の維持は、兵站管区に在りては兵站司令官、部隊後方管区に在りては当該兵団(部隊)幕僚の責務なりとす
      行動の便益、企図の秘匿ならびに分散の目的を以って、為し得れば前送及び後送の為、夫々別個の道路を指定することあり
    9. 第83
      敵の後方に於いて行動する機動兵団に対する補給は、開放せられたる道路を有する場合に在りては有力な掩護(戦車部隊)を附したる自動車輜重に依り、完全に又は一時連絡路を遮断せられたる場合に在りては空中輸送に依る
      機動兵団の後方遮断せられたる場合に於ける傷病者は、空中又は地上輸送機関を以ってする後送可能となるまで軍隊と行動を共にす
      機動兵団の任務達成上必要なる予備資材、修理材料及び衛生ならびに獣医材料を、同兵団の行動開始までに適時其の出発地点に集積することは、幕僚及び各兵種各部長官の最も重要なる責務なりとす
    10. 第84
      補給停車場は原則として各狙撃(騎兵)軍団に対し一個づつを開設す。但し機械化兵団は、多くの場合狙撃軍団補給停車場に依存するものとす