作戦要務令

第三部


第3篇 衛生

第2章 馬衛生

第4節 戦闘間の勤務
  1. 第231
    戦闘間、傷病馬救護の為、通常各歩、砲兵連隊を中心とし、之に配属若しくは隣接する部隊合同し病馬救護所を開設す
    戦闘間各部隊は、自隊の人員、材料を以って傷病場を戦線に於いて救護するものと、病馬救護所に於いて救護するものとに区分し、戦線に於いて救護するものに対しては成るべく其の集結しある附近を巡回し救急の処置を講じ、所要のものを病馬救護所に送致するものとす
    病馬救護所の位置は、各連隊の弾薬班若しくは段列の附近に於いて傷病馬の収療に適し、且つ地物の利用に便なる如く選定するを要す。而して、病馬救護所に収容せる傷病馬は、必要なる治療を施せる後、軽症にして戦闘に堪うるものは直ちに戦線に復帰せしめ、戦闘に堪えざるも回復の見込あるものは成るべく之を取纏め、適時病馬集合所(病馬救護所より師団病馬廠に到る傷病馬の集合に便ならしむる為、通常師団病馬廠必要の人員を派遣し之を設く)、若しくは師団病馬廠に後送するか、又は進出せる此等馬収療機関に引継ぐ
    病馬救護所は所属部隊の前進に方り、未だ後方より馬収療機関到着せざるときは傷病馬と共に所要の人員を残置し、其の他は迅速に所属部隊に追随す
  2. 第232
    師団長戦闘を予期するときは、師団病馬廠の全部若しくは大部を成るべく速やかに前進せしめ、戦線の後方適宜の地点に開設し、病馬救護所又は戦線より直接来る傷病馬を収療せしむ。爾後、戦闘の進捗に伴い逐次躍進し、病馬救護所を前進すると共に、其の移動診療班及び装蹄班をして絶えず前線に進出して部隊の診療及び装蹄を援助せしむ
    師団病馬廠を開設する位置は、傷病馬の多発する方面に於いて成るべく戦線に近く、敵眼、敵火に掩蔽し、傷病場の収容及び後送に便にして、水及び藁桿類を得易く、且つ適当なる馬繋場を有するを可とす。而して、弾薬交付所附近に開設し得ば便なることあり
  3. 第233
    軍隊追撃に移るや、師団長は師団病馬廠をして、成るべく速やかに病馬救護所其の他前線に在る傷病馬を収容し、之を兵站病馬廠の収容班に引継がしむ。然れども、其の一部をして直ちに部隊に跟随し、爾後発生する傷病馬を収容せしむ
    退却に決するや、師団長は速やかに師団病馬廠に的確なる命令を与え、後方に移動せしむ。此の際、師団病馬廠長は収容馬を適宜数団に分ち引率者を定め、戦闘部隊の行動を妨げざるを要す
  4. 第234
    軍司令官は兵站病馬廠を適宜戦場に前進せしめ、師団病馬廠と交代し、或は自ら傷病場の収容に任ぜしめ、又、野戦軍馬防疫廠をして所要に応じ前線に進出し直接部隊の防疫に協力せしむ
  5. 第235
    戦場に在る馬衛生機関は常に自ら警戒し、不意の敵襲に備うるの着意を必要とす