作戦要務令

第四部


湿地及び密林地帯に於ける行動

第2章 密林地帯に於ける行動

第3節 作業の実施
第1款 誘導
  1. 第53
    誘導隊は縦隊の前進方向を正確迅速に選定し、一般路線を概定するものとす
  2. 第54
    誘導隊の編組は状況に依り異なるも、選抜せる歩兵若しくは工兵将校の指揮する歩、工兵約1小隊及び所要の器材を以って編成し、通常之を進路班、経路班、掩護班、予備班等に区分す。其の例、附表第一の如し
  3. 第55
    誘導隊長は、予定せる進路に従い地形と林相とを大観して、局部の地形に幻惑せらるることなく所望の方向を維持しつつ要点より要点に躍進す。之が為、進路班に適時方向若しくは逐次に目標を示し、其の正否を点検、修正しつつ前進す
    躍進すべき要点は経路の点検及び方向の維持に便なる如く、顛頂、鞍部、稜線、谷地、林空等に選定するを有利とし、其の進路は速やかに要点に進出するを主とし、後続作業の難易には深く介意するの必要なきものとす
  4. 第56
    進路班は隊長の示す方向に一意誘導隊の為進路を開設するものにして、少なくも二交代の要員を含む如く部署し、且つ特に之を軽装せしむること緊要なり
  5. 第57
    経路班は経路機(常に2箇を使用するものとす)、測高計等に依り、常に現在地を明らかにすると共に、適時其の景況を隊長に報告し、且つ進路及び距離を標示する等、経路を明瞭ならしむるものとす
  6. 第58
    掩護班は歩兵を以って編成し、誘導隊の警戒、掩護等に任ずるものとす
  7. 第59
    方向の維持に関し注意すべき事項、概ね左の如し
    1. 一、
      誘導隊長は出発前、左の事項に就き特に其の準備を完全ならしむ
      • 器材の整備及び点検
      • 地図の整備及び研究
        • 最近の空中写真等と比較して地図の精度を研究すると共に、所命の進路に基き進路上の要点を決定し、且つ之に至る距離及び方位角を測定し記入す
      • 磁針偏差の測定
        • 既往の調査に依り既知しあらざるときは、天体等に依り、或は附近の著明なる目標に依り真方位を決定し、磁針偏差を測定す
      • 出発点の標定
        • 出発点は図上と現地とを正確に一致せしむるを要す。之が為、著明なる目標より経路機に依り誘導するを要することあり
    2. 二、
      進路の点検は磁針に依り概定したる路線を直進したる後、経路機に依り行うを通常とす。然れども、磁針の局所偏差及び地図の不正確等に依る誤差を生ずることあるを以って、常に地形を大観すると共に、展望若しくは太陽、星等に依る標定を併用して、過誤なからしむるものとす