作戦要務令

第四部


上陸戦闘

第4章 特殊の上陸戦闘

第2節 特殊の海岸に於ける上陸法
  1. 第128
    極寒時に於ける上陸戦闘に於いては、気温、結氷の状態、特に其の強度等に応ずる如く、輸送船及び上陸用舟艇の砕氷、耐氷、耐寒の設備等に就き、特別の考慮を必要とす
    極寒時には跳込み上陸することを避けんが為、上陸点を通常結氷せざる急深海岸、又は直ちに氷上に上陸し得る堅氷区域に選定するを有利とす
    泊地より直ちに敵に遠く氷上に上陸するを得ば有利なり。此の際、上陸部隊は予め氷上通過の装備を整うるを要す
    極寒時の上陸に於いて人馬の湿潤を防止すること極めて緊要なり
  2. 第129
    輸送船及び舟艇砕氷しつつ前進する場合に於いては、運航の自由を保ち、且つ砕氷を容易ならしむる為、隊形の選択、運動の適正、舟艇相互の協同等に注意するを要す
  3. 第130
    極寒時に於ける上陸計画の策定に方りては、水路の閉塞、舟艇運航の困難、防寒被服の装着、脂油の凍結等に起因する機関の故障等の為、上陸作業は著しく其の能率を低下することあるを考慮するを要す
    泊地を何れの地点に求むべきやは、状況、特に結氷の状態、砕氷の能力等に関す。而して、結氷の状態は局地の気象、特に風向、潮流等に依り変転するものなるを以って、此等の状況を予め明らかならしむるを要す
  4. 第131
    結氷海岸に於いては、舟艇は砕氷し、或は流氷を回避しつつ縫航前進し、通常結氷原に擱坐する如く全速力を以って達着するものとす。時として結氷原中に氷湖若しくは亀裂存在することあるに注意するを要す
  5. 第132
    石花礁(*註:サンゴ礁)海岸に於いては、予め石花礁の状態を偵察判断し、成るべく着岸容易なる地点を選定し、或は満潮時を利用して之を超越し上陸するものとす。而して、着岸容易なる地点は海岸の湾入部、又は河口等に求め得ること多し
  6. 第133
    石花礁上を跋渉する部隊は、急深部又は礁湖に遭遇することあるを以って、上陸部隊は之を回避し、或は敏活に之を通過し得るの準備を整えあること緊要なり
  7. 第134
    水際に断崖、岩礁等存在する海岸に在りても、敵を奇襲する為、屡々上陸を敢行することあり。此の際、上陸部隊は断崖攀登若しくは岩礁超越の為、所要の材料を準備携行するを要す