砲兵操典

第二篇 銃教練
第二章 戦闘

第一節 地上戦闘
  1. 第九十七
    小隊長は戦闘の為通常小銃分隊を散開せしめ配属せられたる機関銃班に其の占むべき位置を示し陣地を占領せしむ
  2. 第九十八
    小銃分隊を散開せしむるには散開の位置要すれば目標(方向)、散兵の間隔を示したる後左の号令を下す
    • 散れ
    小銃分隊長は基準兵の占むべき位置に至りて停止し散兵の線を示す
    縦隊に在りては戦闘伍の右翼兵は基準兵となり分隊長の位置に至りその他の者は概ね前(後)半部は左(右)へ現在の関係位置を保ちたる侭駈足を以て斜行し基準兵に近き者より逐次間隔を取りつつ射撃の位置に就く
    横隊に在りては分隊長は基準兵を示し基準兵以外の兵は右若くは左に斜行し後列兵は前列兵の左に出で前項に準じ動作す
    各散兵の間隔は別命なければ約四歩とす
  3. 第九十九
    散兵は射撃の位置に就くにあたり間隔を墨守することなく地形、地物を瞬時に選択し之に応ずる射撃姿勢を取るものとす此の際著明なる地形、地物に彙集するを戒むるを要す
  4. 第百
    射撃は近距離に於て敵を確認必中の効果を予期するに至り開始するものとす
    至近の距離に於ける不意且適切なる射撃は敵をして壊乱に陥らしめ或は之を殲滅し得るものとす
  5. 第百一
    小隊長射撃目標を指示するには小銃分隊に対しては分隊毎に其の射撃すべき目標(区域)を以てするを通常とす機関銃班に対しては通常特に重要なる目標を指示し射撃せしむるものとす
    散兵は分隊の射撃目標(区域)中己に対抗せる部に於て比較的明瞭なる者を射撃するものとす
    戦車に対しては至近の距離に於て勉めて多くの火力を集中し其の展望孔、銃眼、砲門等に対して射撃するものとす
  6. 第百二
    全身に方り小隊長及び小銃分隊長(軽機関銃班長)は小隊又は小銃分隊(軽機関銃)を交互に前進せしむるものとす此の際特に機関銃の火力を利用する事緊要なり
  7. 第百三
    前進に方り小隊長及び小銃分隊長(軽機関銃班長)は小隊又は小銃分隊(軽機関銃班)の前方に在りて之を誘導す
  8. 第百四
    散兵又は射撃の姿勢にある軽機関銃を早駈(駈歩)(匍匐)にて前進せしむるには左の号令を下す
    • 早駈(駈歩)(匍匐)
    • 前へ
    散兵は「早駈(駈歩)(匍匐)」の号令にて銃を安全装置にし表尺を倒し左手を以て木被の所を握り迅速に前進準備を整え迅速に前進準備を整え「前へ」の号令にて早駈(駈歩)に在りては銃口を上にして銃を下げ匍匐に在りては適宜の方法に依り銃を携行し小銃分隊長を基準として前進す
    軽機関銃に在りては「早駈(駈歩)(匍匐)」の号令にて一番は銃を安全装置にし「前へ」の号令にて銃長及び二番は直ちに早駈(駈歩)(匍匐)に移り一番は早駈(駈歩)に在りては体を起こしつつ右手を以て提把を握り(十一年式軽機関銃 右手を持って銃把を、左手を以て握革に依りて放熱筒の中央部を下方より握り)て銃を下げ匍匐に在りては適宜の方法に依り銃を携行し軽機関銃班長を基準として前進す
    匍匐するには伏射に準じ伏臥して左足を右足下に深く曲げ右足を臀部の後方に曲ぐると同時に左肘又は左手を前に出し右足を以て体の前方に推進し或は両肘を支点として体を前に進め又は片肘を支点とし反対足を前方側に曲げその足及び膝にて体を推進する等の方法に依る
    速歩にて前進せしむるには左の号令を下す
    • 前へ
    散兵または軽機桿銃は第二項又は第三項に準じ速歩にて前進す
    発進に方りては準備の為著しく姿勢を変化し敵の注意を喚起し無益の損害を受けざる事特に緊要なり
  9. 第百五
    散兵又は軽機関銃を停止せしむるには左の号令を下す
    • 止れ
    散兵は小銃分隊長の誘導に従い停止し第九十九に依り、軽機関銃は第五十六に準じ動作す此の際地形、地物の選択利用の為躊躇する事あるべからず
    既に射撃を開始したる後に於ては散兵又は軽機関銃は停止せば自ら射撃を開始するものとす
    射撃の目的を遊せずして停止せしむるには「伏せ」(「折敷」)と号令す散兵又は軽機関銃は敏活に地形、地物、陰影などを利用し伏臥(折敷)を為し敵眼、敵火に遮蔽す
    伏臥するには伏射に準じて姿勢を取り小銃は左前腕に載せ槓桿を上にし軽機関銃は脚桿の基部を左手の掌に託し槓桿を左にす
    折敷くには膝射に準じて姿勢を取り銃は左膝の前に立つ
    何れの場合に於ても著明なる地形、地物の附近に停止するは之を避けざるべからず
  10. 第百六
    歩度の選択は敵火の状態、地形、運動の目的などに依り異なるも敵弾下に在りては通常駈足を用い一地点より一地点に躍進するを可とす又状況に依り匍匐を用うる事あり然れども敵の有効射撃を被らざるときは速歩を用うるを可とする事あり
    早駈若くは駈足を持って一躍前進すべき距離は状況に依り一定とし難しと雖も敵火の効力著しき時は通常三十米を超えざるを可とす
  11. 第百七
    銃機関銃班は所属指揮官の命令により戦闘桿適時陣地を変換する事あり而して陣地変換に方りては動作を敏活にし且遮蔽に勉め新陣地に於て急襲的に射撃を開始する事緊要なり
  12. 第百八
    突撃を行うに方り小隊長は適時突撃部署を為し機を失せず突撃を号令し率先先頭に立ち猛烈果敢に突撃すべし
    小銃分隊は突撃に先立ち適時銃剣を著け突撃を号令せらるるや小銃分隊長は率先先頭に立ち散兵は渾身の勇を振い猛烈果敢に突撃すべし
    機関銃班は突撃に方りては猛烈なる射撃に依り小銃分隊の突撃を支援し分隊将に敵中に突入せんとするや機を失せず前進し爾後の戦闘に協力すべし若し射撃を持って小銃分隊の突撃前進を支援し得ざるときは小銃分隊に追随して前進すべし
  13. 第百九
    陣地にある小隊は敵兵近接するに従い益々沈着して其の火力を最高度に発揚するを要す此の際小隊長以下に軽挙に其の位置を捨てて出撃するを戒むべしと雖も小隊長は荀しくも乗ずべき機を看破せば突撃を敢行するに躊躇すべからず
    敵兵不意に我が陣地に突入せんとせば小隊長以下は敢然起ちて白兵を振るい之を殲滅するを要す